ハロルド・ピンターはもう出ないだろうか……中学から大学時代の思い出 | 「絶望名人カフカ」頭木ブログ

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『絶望名人カフカの人生論』『絶望読書』『絶望図書館』、NHK『絶望名言』などの頭木弘樹(かしらぎ・ひろき)です。
文学紹介者です(文学を論じるのではなく、ただご紹介していきたいと思っています)。
本、映画、音楽、落語、昔話などについて書いていきます。

ハロルド・ピンターがノーベル章をとったときには、
ものすごく期待したのに、
思ったほど本が出ませんでした……。

翻訳されていない小説や詩も、
ぜひ本にしてほしいものです。

翻訳本が出るということは、
とても大切なことだと思っています。

ハロルド・ピンター全集/ハロルド・ピンター

¥9,450
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あと2点になっています。
これは買っておいたほうがいいと思います。

個人的にとくに好きなのは、
「部屋」
「かすかな痛み」
「ティー・パーティー」短編のほう
「ベースメント」

私が中学生のとき、この全集はすでに絶版でした。
地方から、神保町の古書店に、
100枚以上の往復はがきを書いて問い合わせ、
それだけでお小遣いがなくなり、
しかも、1冊8000円という、
当時の中学生には目玉の飛び出る値段をふっかけられて、
ようやく2巻だけを入手しました。
ボロボロだったので、自分でカバーを作ったりしていました。

大学で関東に出て、
このピンターの全集をコピーするために、
筑波から国会図書館まで通いました。
1日に30ページしかコピーさせてもらえなかったので。
当時はとにかく時間がかかって、
帰りが遅くなって、宿舎のお風呂の時間に間に合わなかったりしたのを覚えています。

コピーが話の途中で切れたりして、
数日間は前半や後半がわからなかったりして、
もどかしかったですが、
それがまた想像力をかきたてて、楽しい面もありました。
上記した、短編の「ティー・パーティー」は、
最後の1ページだけを先にコピーして、
その1ページにしびれました。
その前はどうなっているのだろうと思いましたが、
全体を読んでみると、
その1ページだけのときのほうが感動が大きかった気がしたりしたものです。

その大学生のとき、
ある日、この全集が復刊された新聞広告を目にして、
そのまま、部屋にも戻らず、
筑波から八重洲のブックセンターまで行って、
買いました。
何セットも積んであって、あのときは感動したなー

1セットだけ買うつもりだったのですが、
またすぐに絶版になるだろうから、
そのときは、昔の自分みたいな人に売ってあげようと思って、
2セット買いました。

そうしたら、帰りの電車賃はあったのですが、
バス代が足りなくなってしまいました。
それをバスの中で気づいて、
にっちもさっちもいかなくなったとき、
バス代を貸してくださった人がいました。
どこの誰かわからなかったので、
いまだに返していませんが、
本当にありがたかったです。

とまあ、そんな思いをしてまで読もうとした人間もいる本です。

今回のはノーベル賞をとったときに復刊された残りだと思います。
次があるかどうか。
簡単に買えるときに買っておいたほうがいいのではないかと思います。

ピンターと言えば、喜志哲雄先生が第一人者で、
翻訳もとても素晴らしいです。
喜志先生による研究書もあります。

劇作家ハロルド・ピンター/喜志 哲雄

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