実家の庭にあるたくさんの植木たち。
私が梯子に乗って手入れできるものは自分でやった。
あまりにも高く、実家の梯子で手入れできないものは、親戚のつてで植木屋さんへお願いした。
で、一番の問題が、槇。
これは7メートル以上あり、お一人で来られた植木屋さんでも手持ちの梯子では届かないので無理ですと言われてしまった。
父が元気だった時は、知り合いのつてで高所作業車を手配して、父自身が乗って、手入れしていた。
父が体調を崩してからは、手入れをどうしようかと、父自身も悩んでいた。
手入れをお願いするとなるとお金がとてもかかる。
伐採してしまおうかと言っていたが、思いきれなかったようだ。
父が亡くなってからは、母の悩みの種になっていた。
時々、この木を見上げては手入れをどうしようかとため息をついていた。
ここ一年くらいだろうか、枝のところどころ葉が茶色くなっていた。
虫が入ったか、病気になったのだと思う。
近所の親族の家で、10メートルはあるだろう、とても高い松があり、その手入れを高所作業車のある植木屋さんに頼んだというので、同じ業者さんへ槇の伐採もお願いした。
実際、伐採を決断しお願いしたのは母だったが、迷いがあったようだ。
父が会社員時代に気に入ってボーナスで購入した槇。
伐採して良いものかと・・。
母は、父に申し訳なさと寂しさがあったのだと思う。
伐採前に仏壇に「じいちゃん、ごめんね。」と謝っており、涙を流していた。
私も寂しさがある。
父の面影が減っていく、思い出の物を失う感覚。
伐採してしまえば元に戻すことはできない。
しかし、この植木を維持管理するのが、もう限界なんだと思う。
伐採当日は晴れ。
槇に「ありがとうございました」とお清めをして、業者の方に伐採していただいた。
プロはすごい。
大きな槇なのに、高所作業車一台とお一人で一時間程度で伐採してしまった。
あっという間だった。
幹は40~50センチの輪切りにしてもらい、落とした枝は、知り合いの方にお手伝いしていただき、私と長男とで、細かくして、市の焼却施設へ持ち込みして処理した。
皆でやったら半日で処理できた。
木が高すぎて分かっていなかったが、落とした枝を処理していたら、あちこちが枯れて茶色くなっていて、乾燥してポキポキ折れてしまった。
伐採しなくても長くはもたなかったかもしれない。
大木がなくなると、景色がまったく違う。
とても寂しく感じる。
じいちゃん、申し訳ない。
伐採してしまったよ、ごめんね。