土とわたくし | 子宮筋腫をとったらば

子宮筋腫をとったらば

2015年12月に開腹で子宮の全摘をした、45歳・既婚・子ナシの備忘録。

今度の住まいにはごく小さい庭があります。木や草が所狭しと植わっていて、なかなかに賑やか。ところが私の方には園芸の素養がまったくありません。育った実家にも庭はあったけれど母の領分だったし、私自身は皮膚がひ弱なこともあって土いじりは苦手でした。植物に詳しい友人の話を聞いても感心するばかり。

 

管理しなければならない立場になってみれば、ただぼんやりはしていられない。引っ越してきたばかりの秋から冬にかけてはまだよかった。暖かくなってきて植物が元気になってくると、その威勢のよさに今更ながら目を見張る思いです。

 

そもそも長いこと人の手が入っていなかった庭なので、草木は好き手に野放図に伸び放題。本当に猫の額程度なのに随分欲張っていろいろ植え込んであって、狭い土の上が満員御礼状態です。どん素人の私が見ても「ちょっと混みすぎじゃない?」と思うほど。

 

何分知識が圧倒的に足りないのでネットで調べたり詳しいお方に教えを乞うたりしながら、手の届く範囲は少しづつ剪定を始めました。よそから知識をいただきながら意識したのはよく見ること。毎日小さな庭を隅から隅まで観察(狭くてよかった)。しつこく見ているうちに無知ながらもぼんやりと、なんとなくわかってくることがあるものですね。元気のないのや虫にやられているのは、日当たりや風通しが悪いとか、雑草に負けてしまっているとか。そんなところをこつこつと、時間のある時にちょっとづつ。

 

やってみればこんな狭い庭の遊びのような手入れでもそれなりの装備が必要なことが分かりました。手が情けないほど弱いので使い捨てビニール手袋の上から園芸専用のゴム手袋を装着して普段着のまま庭をいじっていたら。「あの……かのこが庭から戻るといろいろ落し物が……」と夫から遠慮がちなクレームが来るように。虫とか葉っぱとか室内に連れてきちゃうんですね。農作業用のファッションってよくできているんだなと納得しながら、古いシャツとパンツを庭仕事専用に任命。意外と髪にもいろいろくっつくので頭には手拭いをほっかむり。どこから見ても立派な田吾作ばばあの完成です。

 

当面のメインの敵はドクダミとハナニラ。抜いても抜いても雨が降って日が当たればこんにちは。敷石の隙間から顔をのぞかせているのを見ると、敵ながらあっぱれと思うし、抜いているこちらが極悪非道な気がしてくる……。そもそも園芸用で愛玩される植物と雑草の違いとはなんぞや?という気持ちにもなりますよね。雑草だって花も咲くし、ハコベの花なんて可愛いし……。でもドクダミとハナニラは圧倒的に臭いので、抜く。

 

混雑した草木の中に身体を押し込んで地面にかがみこんで草を抜いていれば、当然虫さんたちともこんにちは。虫にも強くはないので最初は「きゃー」な気分でした。でも慣れる、数をこなすってすごい効果だなと思います。立派な根っこをすっぽんと抜いて、ダンゴムシがわらわらと出てくると「あー邪魔してごめんよー、すぐ終わるよー」と思えるように。でもまだ初見の虫が出てくるとぎょっとしてしまう。季節が一周したら耐性が付くのかな?あと刺されたら痛そう&痒そうな虫はいくら見慣れてもイヤ。密集しているアブラムシもちょっとイヤ。多分私は「虫めづる姫君」にはなれない。

 

既存のものの手入れだけではモチベーションが上がらないので、片隅に使用頻度の高いハーブを何種類か植えました。うむ、これは楽しい。フレッシュハーブをちょっとだけ使いたい場面は結構多くて、その都度パックに入ったものを買って残りを冷凍していたけれど。いつでもそこに生えているのはとっても便利そして経済的。青葱の根っこを突き刺しておいたら笑っちゃうほど元気よく育って、しばらく薬味の葱を買っていません、得した気分です。

 

でも人間が美味しいものは虫にも美味しいのですよね……。紫蘇の葉にかわいく丸い穴をあける犯人を毎朝探すのに、検挙率が恐ろしく低いのです、どこに隠れているのか。以前お庭の大量のバジルをくださった方が、「もう虫に食われるのは必定と諦めて、食われてもいいくらいたくさん植えることにした」とおっしゃっていたけれど、その気持ちもわかるような。それでも今までの数少ないベランダ園芸の経験上、バジルの虫食いはすごいので鉢植えにして室内に入れました。ホントは土の上で元気よくわさわさ茂ってほしいのに。

 

嫌いと思っていた庭仕事だけれど。ひょいと雑草を抜くとその周辺が気になって着替えて狭い土の上にはいつくばって目を上げると伸びた枝が気になって鋏を手にしてもりもり枝を落として。気が付いたらあっという間に数時間(腰が痛い)なんてことが。晩年の祖母は浅草のど真ん中育ちで土に縁のない人だったのに、モンペを履いて姉さん被りで庭に座り込んで雑草を抜いたり、花の手入れをしたりそれは楽しそうだったのを思い出します。私も土が懐かしい年頃になってきたのかも。

 


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