感動の別れ | aaa

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英語漬けの毎日が終わるのと同時に、旅が再開される。


一ヶ月ぶりにパッキングをし、


一ヶ月ぶりにバックパックを背負う。


ああ、久しぶりだこの感覚。今だけはこの重さが心地いい。


たった一ヶ月放浪しなかっただけでこんなにも旅は俺をわくわくさせてくれる。








「何で行くんだよ!」


ムハンマドが寂しそうに言葉を投げつける。
今になってみれば彼のしつこさも可愛く見える。



「ごめん、俺は旅人なんだ。」


理由なんてない。行かなきゃなんないんだ。





アバスと固い握手を交わす。


「ケンの旅の成功を祈ってるよ。
あと、ケンがイスラムの世界に飛び込んで来ることもね。」



本当に彼はアツいムスリムだった。
自分が不甲斐なく思えるほど、彼の中にはどっしりとした思いがあった。

俺が風引いた時、わざわざバナナ買ってきてくれたね。

ありがとう。






「アホメット、今までありがとう。楽しかったよ。」


彼は何も言わない。
かと思うと、急にぐっと体を引き寄せられ、男同士のむさ苦しい抱擁。

そうだよな、俺らに言葉なんかいらないよな。


「バーイ!ケン!」


右手で瞼を擦った彼の顔は晴れやかだった。





「ありがとうみんな。またどこかで会おう。」






別れは嫌いじゃない。新しい出会いへの一歩だから。


ただやっぱり、

心に穴が空くような、心がえぐられるような、

出来ればそんな思いは、したくない。








さあ、インドで穴を埋めてやる。





街に出れば、インド人の視線は子供程もあるバックパックを背負った日本人にむけられる。


何をそんな不思議そうに。
ただ、代理店にチケットを取りにいくだけさ。
そして旅をまた始めるだけさ。



代理店に到着し、一息つく。


カウンターのおばさんがにこやかに言う。




「チケット取れなかったわ。お金は返すから。ごめんなさいねえ(笑)」









ああああああああいい感じで文章書けてたのにいいいいいいいいい





なんだよ(笑)って。笑ってんなよって話ですよ。


こっちは真剣に文章書いてんの。いやまあこんな風になったのは直接的には私のせいですけど。いやまじでやめろそういうの…







話を聞くと、駅の職員が日付を間違えて発券したらしい。


それでもう一度発券するには、またパスポートのコピーが必要だったらしく、代理店の方は僕にメールを送ったんですけど、僕はそれに気付かず。それは僕も悪いです。




ていうか駅の職員ミスんなよ駅の職員なんだから…




でもまあ、取れなかったチケットってのはチェンナイ→ブバネシュワールの方で、


バンガロール→チェンナイのは自分で取ったんでとりあえずは大丈夫なんですよ。




ただね、インドの列車っていつかの記事にも書いたけど、その日に予約取ろうとか甘ったれた考えだと、返り討ちにあうわけ!


だからバンガロールは抜け出せても、いつチェンナイを抜け出せるのかわかんないんです。


チェンナイはもう一泊すらしたくないし。安宿ないし。ネットないし。


まあこの前みたいなぎゅうぎゅう詰めのクラスのチケット買えば行けるんでしょうけど、

丸一日そこいいるのは流石に狂っちゃう。

別れの淋しさに浸る余裕もないです。

車内はおっさんの臭いで充満してます。







まじなんなの…えっなんで笑ってんの…と結構ブチ切れながらお金返してもらい、駅に向かいました。






バンガロールシティー駅が1番大きい駅なのかな。


もう人しかいません。ホームレスの人とかが地面に寝てますしね。


とりあえず一刻も早く明日のチケット予約しなきゃ…と思い外人用窓口を探しました。



インドの列車には、外国人用の席の枠がいくつか設けられている便もあって、相対的に競争相手が少ないので、一般人よりも予約が取りやすいみたいです。


まあ普通に見つからなかったんでそのへんの駅員に聞きました。


最初、警察に聞いたら真反対を指差して「あっちだ!!」とか言うのでもうダメだこいつと思いました。




急いで窓口に行き、尋ねます。


「あの、明日の朝、チェンナイからブバネーシュワル行きたいんですけど!」



カタカタとキーボードを叩く駅員。



「ああ、一席だけあるよ。」







やっぱり神はいるんだね、アバス。



やった!これでプリーにいける!


もうすごく嬉しくて「じゃあそれで!」と伝えると、用紙を渡されました。



「あと4分でこの窓口閉めるからここに必要事項書いて。」



切羽詰まってるうううううううう


当たり前に全部英語おおおおおお




とりあえず名前と歳と住所だけ書いて渡すと、残りは全部書いてくれました。


本当この駅員さんいい人でした。終始笑顔だったし。




用紙を受け取り、またカタカタっと鳴らしたあと、出てきたチケットを僕に渡してくれました。





「はい。1780ルピーね。」



えっ…たかっ…ぼってない…?いい人じゃないの…?



渡されたチケットをよく見ると2Aって書いてました。




欲しかったチケットはSLっていう寝台の3段ベットエアコン無しのクラス。
確か700ルピーくらいだったはず。


その上に3Aっていう寝台のエアコン付き3段ベットのクラス。


そんで僕の買ったのは2Aってう寝台のエアコン付き2段ベットのクラス。





ああ、僕が欲しかったクラスの2個も上ね。豪華だね。はは。は…




もうなんでもいいです。


チェンナイ向かいます!