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「楓坂四駒堂」
耄碌妄想日記
日曜版No.97でおます!
当ブログは
よる年波にもめげず
日・木曜日 午前0時
週2回更新どぇ~す
追 悼
キダ・タロー
♪鳴る花火 ならぶ夜店に
縁日の まちのともしび
下町の 夜が匂うよ
きみが生まれた きみのふるさとの
ふるさとの はなしをしよう
※詞・伊野上のぼる
60年代の青春抒情歌謡…
「舟木一夫」の前はこの「北原謙二」。
♪日暮れの小径(1961)♪忘れないさ(1961)…
その後、リメイクによって♪宗右衛門町ブルースに生まれ変わった
♪さよなら さよなら さようなら…とか…
切々と胸に迫るハイトーンボイス。
思春期の入り口にいた私にとって
彼の唄うお下げの少女像は
まさに「初恋」の憧憬でした…。
冒頭の♪ふるさとのはなしをしよう
少し後…1965年のリリース。
「浪速のモーツァルト」はおろか
「キダ・タロー」の名さえ知らぬまま
高校生活が始まったこの年
まだ知らぬ初恋を夢見ながら…
このどこか懐かしい抒情の世界に浸っていました。
想えば、これが初めての
「キダ・タロー」…
おつかれさまでした。
謹んでご冥福をお祈り致します。
※パチンコ店の台の並び(列)を
「シマ」と呼びます。
次回4コマ(木曜版)
「普通の人々」です。
第2章
「豊饒の海へ」
青年誌は荒野をめざす
「ヤングコミック」Ⅲ
かわぐちかいじ
♪夜が明けたら
一番早い汽車に乗るから
切符を用意してちょうだい
ほんとほんとよぉ
一枚でいいのよ~
※詩・浅川マキ…「詞」ではなく「詩」は彼女の拘り。
「かわぐちかいじ」
このかな表記の漫画家の名前を知ったのも「ヤングコミック」。
多分…1969年12月23日号…
あのぉ…現物がないんで確信がありません。
前回の「真崎・守・はみだし野郎の子守唄」連載開始の少し後。
タイトルは「夜が明けたら」。
えー…すいません!
その「真崎・守」の項、少し補足しておきます。
「ヤングコミック」7月8日号に掲載されたのは…
連作の序章とも言うべき、短編「夜盗のごとき訪れ」。
名目上の連作「はみだし野郎の子守唄」のスタートは2か月後の9月9日号でした。
さて…「かわぐちかいじ」のデビュー作
その「はみだし野郎の子守唄」第2話「はこ師」で「真崎・守」がBGMで使った「浅川マキ」のヒット曲と同タイトル。
「浅川マキ」…どの世代の方までご存知でしょうか?
ライブで訪れていた名古屋で急逝したのが2010年。
享年67才でした。
最後までアンダーグランドに徹した歌手人生…。
本物のシンガーでした。
1968年、新宿「蠍座」での伝説のワンマンライブ。
彼女が♪夜が明けたら/かもめのカップリングでレコードデビューしたのが、翌1969年。
この世に出たばかりの楽曲を、二人の若き漫画家が相次いで取り上げた…
如何に「浅川マキ」の登場が衝撃的だったか?…その証だったかも知れませんね。
当時「かわぐちかいじ」は明治大学在学中の学生作家。
同大漫画研究会のメンバー。
コミックと言うか、劇画と言うか…その系統の漫研では先駆者的な存在だったと思います。
それまでの大学漫研と言えば、まずおとな漫画、コマ漫画が中心。
例えば、1950年代の「早稲田漫研」
1930年代に生まれの「園山俊二」「東海林さだお」「福地泡介」らのプロ作家を輩出しています。
同じく「弘兼憲史」「ラズヴェル細木」「やくみつる」などはその後の世代。
で、「かわぐちかいじ」の「明治大学漫研」。
同時代に「ほんまりう」「いしかわじゅん」がいたのは有名な話。
みんな揃って、ペンネームはかな表記。
「かわぐちかいじ」が始まりだったんでしょうね?
本名は「川口開治」…それを「かな」に…。
字面…その語感…
デビュー間もない頃から、「ペンネーム」とその作品世界との見事なフィット感。
いい名前だなぁ…って思いました。
作品が「ペンネーム」を育てるってことかも知れませんが…でもね。
「ペンネーム」って言わば作家の顔。
「手塚治虫」が「虫」に拘ったように…
やはりみなさん、いろいろ考えるんですよね…。
だから本名「萩尾望都」なんて奇跡です。
感性は遺伝するんでしょうか?
「かわぐちかいじ」のデビュー作品「夜が明けたら」
当時、マニアックな人気を呼んでいた「永島慎二」、あるいは「真崎・守」らによる…等身大の若者を描いた青春漫画。
彼もあの時代の漫画青年のひとり…リスペクトはあった筈です。
しかし、次に「ヤンコミ」に登場した「風狂えれじい(1971)」では、早くも模倣ではなく、この人独特のアナーキーなヒーロー像が確立されていました。
敢えて邪推をすれば…1969年…
後に「仁義なき戦い」など「実録シリーズ」につながっていく「現代やくざ」シリーズ。
若き「菅原文太」が演じたストイックなヒーロー像。
それを彷彿とさせる主人公。
あの頃の様々なカルチャー…映画・音楽などが創作に及ぼした影響は少なくはなかった筈です。
多くの若い漫画家たちもそうだったと思います。
間違っていたらすいません…。
只、こうした混沌とした時代の風を的確に作品の中に具現化できる…
それは「ガロ」あるいは「COM」の作品にも通じるもの…。
いや、それを読み応えのあるエンタメに仕上げる。
やはり突出した才能なんだと思います。
思えば、あの「ヤングコミック」を契機に…
今日に至るまで、私の長~い漫画ドはまり人生で、最も長く、もっとも多くの作品を読み続けてきたのは、間違いなく「かわぐちかいじ」。
55年たった今でも、新作を見られるって…すごいですよね。
現在「ビッグコミック」連載中の「空母いぶき GRATE GAME」。
幼少の頃からの軍事オタクぶりがこんなふうに開花して…。
軍事・軍人をモチーフにした作品群(長編)。
記憶に間違いがなければ…
1971年、「二・二六事件」を描いた「血染めの紋章(週刊漫画TIMES)」を皮切りに、「黒い太陽(1971~・ヤングコミック)」など…70年代、様々な雑誌でこうした系統の作品を描いてきました。
これが80年代後半からの「沈黙の艦隊(1988~・モーニング)」「メデューサMedusa(1990~・ビッグコミック)」を始めとするミリタリーあるいはポリティカルな大作に繋がっていきます。
もちろん、他にも実に幅広いジャンルの作品群があるのですが…
この裏には、けっしてオリジナルに拘らず、多くの作家の原作を得て…ということになります…。
何が凄いかと言えば…これらの作品のすべてにおいて「かわぐちかいじ」の世界が息づいているということ…。
圧倒的な画力・構成力による租借力…
プロ中のプロ…私はずっとそう思い、その才能に魅入られたまま今日まで愛読を続けてきた訳です。
とてもとても、すべての作品を取り上げる訳にはいきませんが…
70年代、「ヤングコミック」掲載作を中心に、私を夢中にさせてくれたいくつかに触れてみます。
以下次週…