玉三郎の勘三郎への想いに、涙!『雪之丞変化』 | ふうせんのブログ

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小林蕗子のブログです。2013年5月に始めたときはプロフィールに本名を明示していましたが、消えてしまいましたので、ここに表示します。。
主に歌舞伎や本のことなどを、自分のメモ的に発信したいなあって思っています。よろしく!!

8月20日、歌舞伎座・納涼第三部『新版 雪之丞変化』を観てきました。

ストーリーは省略します。
ただ、2015年中日劇場で市川猿之助の主演で観たストーリーと、骨組みは同じでしたけれど、構成は全く違っていました。

特に登場人物に秋空星三郎という人物があって、これを中村七之助が演じたのですが…、
玉三郎は、この星三郎に、今は亡き勘三郎を重ねていたと思うのです。
今回の構成と演出は坂東玉三郎によるもので、玉三郎は『雪之丞変化』の舞台を借りながら、勘三郎への想いを綴りたかったのねー、たぶん。

伝えたいとか、表現したいとか、そういうことでもなくて、あえて言えば、「綴りたい」、そんな感じでした。
私には、勘三郎亡き後の玉三郎の哀しみ、いや、盟友・勘三郎への深い親愛の情、いつくしみ、敬愛…そんな複雑な想いが伝わって、涙がとまりませんでした。

星三郎が登場するのは、第一幕(休憩前の時間帯)。
市川中車が演じる座頭・中村菊之丞の一座。
中村雪之丞(玉三郎)は、その一座の若女方。
秋空星三郎{七之助)は、雪之丞の兄弟子です。
星三郎は病いで、還らぬ人となってしまうのですが、
その前に、その病いを知らぬ雪之丞と、星三郎の語り合う場面があって、…
そして、二人は舞いはじめます。
助六と揚巻の場面、『籠釣瓶花街酔醒』の次郎左衛門と八ツ橋、……、『二人椀久』の久兵衛と松山太夫から、『鰯賣戀曳網』の猿源氏と傾城蛍火になって…
「あらっ、この時代にはまだ『鰯賣』の芝居はないでしょ」と、コミカルな場面もあって…
女方はもちろん玉三郎で、立役は七之助。
その七之助がとても堂々としていて、いや、楽しそうにしていて、

〈あー、勘三郎さんが喜んでいる〉と思った途端に、私の眼から涙がじわじわと……。
そして、第一幕の後半、バックには満点の煌めく星が一面に!
玉三郎は無言のまま、星空と向き合って…、勘三郎さんと語り合っているかのようでした。…
私は、星空に勘三郎さんの気配を感じて、とめどもなく涙があふれるばかりでした。

ですから、第一幕の終わりがどんなだったのか思い出せないまま、
休憩時間もただ茫然と、いろんな想いが浮かんできました。
星三郎{七之助)が雪之丞(玉三郎)に語った言葉は、たぶん、玉三郎が勘三郎の想いとして、中村屋の兄弟に伝えたかったことでしょうね。(今回は勘九郎はいないけど…)
それを七之助自身が語る。そのことが大事なのだと、玉三郎は思ったのでしょうね、たぶん…。
座頭・中村菊之丞と雪之丞の会話も、中村屋兄弟に伝えたいメッセージがあったのかしら…

そう思うと、休憩後の第二幕からも、メッセージが伝わってきました。
いや、メッセージという押し付けがましいものではないわね。
勘三郎さんへの、玉三郎の深い想いが籠められていたように思いました。
今回の演出は、場面転換や、背景にある人物模様は、映像で展開されました。
ですから、観客は意識を途切らされることなく、舞台に集中できます。
芝居の中に、ユーモアも織り込まれて、面白い構成でした。

「勘三郎さんは、古典を大事にしながら、歌舞伎に新たな『挑戦』を試みる、そういう芝居作りの場として、この納涼歌舞伎を考えていたのじゃないかしら。これは私の『挑戦』よ」と、玉三郎さんが胸を張って言っているように思いました。

大詰めは美しい『元禄花見踊り』。
玉三郎を中心に元禄美人の、中村芝のぶ、澤村國久、市川猿紫、市川笑野、坂東玉朗、そしてベテランの坂東守若。
立役のほうは、中村いてうは分かったけれど、後の三人が思い出せない…、
ここに勘三郎と玉三郎の連れ舞いが入ったら…どんなにか…、なんて、思ってはいけないのよね。

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ご無沙汰しています。
一昨日から、近況報告を書こうと、パソコンに向かっていたのですが、そのブログはまたにします。

ともかく、今日20日に観た『新版 雪之丞変化』、意外な展開があって、勘三郎の気配が漂って、とても感銘をうけたので、その興奮のまま、とり急ぎブログアップします。

おやすみなさい。

※ なお、敬称についてですが、プロの芸術家や文筆家の方は広い意味での公人ですので、舞台そのものや作品について記す時は、私は敬称を付けません。昔からの慣例です。プライベートな内容と思われる時は「さん」の敬称を付けます。よろしくご了承ください。