(6-1)あっちゃんは死んでいた
| 「敦代は何年も前に死んだ。そんな死んだ娘に何の用だ」と、怒鳴り返された。 |
| 「死んだ・・・」 |
| 「何年も前に・・・」 |
| 一瞬頭が真っ白になった。 |
| 「どうも失礼しました」と、言って急いで電話を切った。 |
| 最悪の返事を聞いた。 |
| 何年も前に死んだ。 |
| 死んでいる。 |
| 死んだ、と言う言葉が何度も何度も頭の中に浮かんだ。 |
| 震える手でタバコを吹かしながら5分ぐらい何も考えることが出来なかった。 |
暫くして頭がゆっくりと回転し始めた。 こんなことなら別れた後、何度か出会った時、なぜもっと話をしなかったのかと自責の念に駆られた。 どんな形であれ、この世には存在しないという現実に、居た堪れないほどの喪失感も同時に感じた。 |
これではまるで小説や映画のストーリーではないか? そんな馬鹿な、こんな結末になるなんて到底信じられない。 間違いであって欲しい。 でも電話の話とは言え、実の娘の死を嘘の話に置き換えることもあり得ないし、結局、罪悪感と彼女へ の愛しさが交互に胸の中で膨らんでは消えの繰り返しが続いた。 |
| その日はまるで夢の中でいるような気持ちだった。 |
その夜、以前彼女との恋の話をした友人に電話をした。 自分ひとりではこの重い現実を受け止められないような気がした。 僕の話を誠意を持って受け止め、そして一緒にこの悲恋のストーリーの悲しみを共有してくれた。 その優しい行為は僕にとって精神的な安定につながった。
次回は(6-2)男の義務です。お楽しみに
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