徳村慎
1.死にかけの息
ひゅーひゅー。息が苦しい。狭い喉から息を吸って吐く。これはS本龍○の最後のアルバムようだ。すうーはぁー、すうーはぁー。そんな呼吸音が録音されている。
ぐきり。首が鳴った。
鼻血の匂いがしてきた。
せめて幸せに生きたかった。
嫁さんをもらって、子供を作って。
そんな幸せすら得られずに死ぬのか。
仕事が無く、統合失調症と糖尿病と闘いながら、死んでいくのだ。
幼い頃は大芸術家になれると信じていた。
なれなかった。。。
発表するどころか、スマホの中は、書きかけの小説ばかりだ。絵も音楽も中途半端。芸術家ってそんなもんなのか。誰1人として認めてくれなかったなぁ。
ひゅーひゅー。ひゅー。。。
息が出来ない。
と思ったら幸せな脳内物質で心が満たされていく。
ああ。神仏は見ていてくださったんだなぁ。
2.あの世とは夢の世界である。
川だった。歩けるほど浅い川。渡り終えて後ろを向くと、泳いでも戻れそうに無いほど深い川になっていた。ごうごうと音を立てて流れる川。
そうか。前に進むしかないのか。
天使のような女性が僕の手を取って歩く。
柔らかい草花が裸足の足に心地良い。
「あなたは、無限のお金と無限の時間と無限の才能を手に入れました。ここで、何をしても良いのですよ」
「じゃあ、靴を作ろう」
お気に入りのスニーカーが出現した。
靴下も必要だ。Tシャツとジーパンも。下着も新しいものに替えよう。
「よく出来ました。。。」
天使のような女性は鳥の姿になって、飛んで行ってしまった。
家を作ろう。キッチンと風呂とトイレと大きな絵が描けるアトリエと、本と楽器がたくさん置ける自分の寝室。
それにお気に入りのスマートフォン。
これさえあれば、アメーバブログに絵(ドローイング、ペインティング)やコラージュや写真や詩や小説を発表出来る。そしてYouTubeには音楽。
しかし、あの世には果たしてそういったものがあるのか?
あった。素晴らしい。
絵を次々に描いて展覧会を開きたいと思った。
本を次々に開いて読む。
お腹が空いたので、おにぎりを生み出す。
超能力というのか魔法というのか。これは便利過ぎる。
博物図鑑も揃える。植物、昆虫、魚貝、鳥類、動物、鉱物、大昔の生き物
庭にはいろんな野菜や花のタネを植える。
間引き菜をサラダにしたりして食べる。
詩集も読みたい。写真集も。
漫画も読みたいなぁ。
Eテレなんかでやってるドキュメンタリー番組もたくさん観たい。世界まる見え、も良い。
無限の時間があるって便利。
僕専用のスーパーも作っちゃおう。
カツカレーなんか良いな。うな丼も食べたいな。
ノートを買って、メモしたり。。。
書けば書くほど、あの世は現実に近づいてくる。
この中で1番やりたいことって何だろう?
楽器を弾くこと?
本を読むこと?
アイスコーヒー飲んでまったりしながら、ウクレレ弾いたり、コミックエッセイ読んだりするのも、なかなか良い。。。
そうだ、今日は、音楽を発表するんだった。
、、、と現実に戻るのだった。
(おわり)
最後まで、読んでいただきまして、
ありがとうございます♬
😊😅🥲😘😛🤨😋😆