小説『ネコロビ』1章「ゲハニタスク」 | まことアート・夢日記

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夢日記、メタ認知、俳句モドキ、詩、小説、音楽日記、ドローイング、デジタルペイント、コラージュ、写真など。2012.1.6.にブログをはじめる。統合失調症はもう20年ぐらい通院している。

小説『ネコロビ』1章「ゲハニタスク」
徳村慎


なんともなまめかしい穴だな。
ウクレレの弦をとっぱらって男は思った。
男の名前はゲハニタスクという。
あるものの小説では岩として登場する。
しかし、彼は単なるハゲオヤジにすぎない。
ゲームをやって漫画を読んで「面白くない」とつぶやく。独り身の彼の部屋には答える者もない。
仕事にも、あまり魅力を感じていない。
40歳にして観光ホテルの課長補佐になったが、そこからは、昇進もほとんどしていない。
60歳の今は?
車も買ったが売ってしまった。
昔、音楽をやるのが面白いんだと、話していたバカな男がいたと思い出して、ウクレレを買ったは良いが、どうやったら弾けるのかが分からない。
そして今、弦をとっぱらってみたのだが、女の穴にしか見えない。突っ込んでみよう。
ズボンとトランクスを同時に脱いでイチモツを突っ込んだ。

ああ。なんとも激しい。
さすがにウクレレの穴はゲハニタスクのイチモツよりも大きかった。でもゲハニタスクには、女の姿が見えているのだ。
自分よりも大きな女を抱いている気持ち良さ。
これが経験できなかったんだよ、今までは。
はぁはぁ。こうしてやるぞ。

ウクレレは巨大化して女の背中になっている。
髪をつかんで引き倒す。お前がこのヤロー。このアマが。こんなになってやがるのか!
密教では合体が悟りだと言うんじゃないか。
はぁはぁ。このアマが。このアマが!
こうしてやる。こうしてやるぞ。

精を放ち頭に浮かんだのは、花のような形。
花のような精霊が浮かび上がり、やはり女の姿となった。

ゲハニ。あなたは、私の旦那さんになるのよ。
うふふ。気持ち良かったのね。いいわ。
そうやって一緒になれるのが好きよ。

あああ。いいぞぉ。いいぞぉ。
お前の名前は?

私の名前はツユクサ。ウクレレと花の妖精。
いいわ。とっても、いいわ。

はぁ。はぁ。はぁ。
心臓が、、、痛い。。。

ゲハニタスクは床に崩れた。
ツユクサがゲハニタスクの手を引っ張ると魂がするりと体から抜け出た。

ゲハニタスクの耳元でツユクサは言った。
「ほら、見てごらんなさい。あなたが死んでるわ」

あれは俺か?
薄汚い老年の死骸が俺なのか?

「ねぇ?、、、これからあなたは生まれ変わるのよ」

人間に?
新しい人生を送れるんだ。ありがたい。

「バカねぇ。人間になんか生まれ変われっこないわよ。せいぜい、あんたが生まれ変われるのはゴキブリかゲジゲジじゃないの?」

ゴキブリだと?
ゲジゲジだと?

「そんな良いものに生まれ変われるんなら、良いけど。道端に生えてる名もない草にでも生まれ変わるのがいいのかなぁ?、、、なぁなぁ。どう思うんや?、、、あんたが何に生まれ変わるのがええんやろなぁ?」

さっきから、あなた、が、あんた、に変わってるぞ。言葉に気をつけろ。さもないと、お前にひどいことをするぞ。

「魂のあんたに、何が出来るん?、、、非力な、ひ弱な魂のあんたに、何が出来るというんや?」

ああ、俺の体が。だんだん虫になっていく!

「そうや。ゴキブリに変わるんがええと思ってなぁ。あんたは他人をゴキブリみたいに扱うのがうまかったから、あんたが今度はゴキブリになりぃや」

俺は。。。ゴキブリ。
ウクレレの穴の中に生みつけられた卵からかえったゴキブリの幼虫だ。ウクレレの迷宮からようやく外に出られた。腐敗した人間が死んでいる。こいつは、俺の体じゃないのか?

むしゃむしゃ。人間を食べて人間に戻るんだ。

ハエが人間の体に卵をうみつけている。
シデムシが窓の隙間から入ってきて、人間を食べている。

ハエが言った。
「私の子供は、人間を食べるから人間に生まれ変われるのよ」

シデムシも言った。
「僕は人間に生まれ変わるんだ」

ああ。ダメだ。こんな罪深いやつらがいくら人間を食べても人間になれるもんか。俺は俺を食べている。

管理人さんが合鍵でドアを開けた。
そして、たくさんの虫がたかったゲハニタスクの死体を見て、警察に通報した。。。

部屋に満ちる消毒の匂い。俺たちは薬の中で死んだ。

そのとき、ツユクサが手を引っ張った。
「ゲハニ。あなたはゴキブリの人生を生きたの。次は何に生まれたい?」

俺は、岩に生まれたい。。。

火山が噴火した。ドロドロの溶岩が冷え固まり、岩になった。これがゲハニタスクの新しい体だった。

地質学を研究する大学生がゲハニの体を少し砕いて持ち帰った。

その大学生は街で出会ったOLさんに恋をしてフラれた。そして毒を飲んで自殺してしまった。大学生の部屋は掃除された。岩のカケラは山に捨てられた。

小さな小さな岩のカケラ、ゲハニタスクが1メートルぐらいで重さ1トンの大きな岩に見えるような状態を想像してほしい。

そこに小人の少年がやってきた。
といっても、ゲハニタスクが1メートルの高さなら、少年は140センチメートルぐらいだろうか。
「なぁ、岩のゲハニタスク。みぃなちゃんがさらわれたんだ。助けてくれ」

「知るかいな。そんなもん、自分でどうにかしたらええやろ。だいたい、お前の名前を名乗らんかい」

「僕の名前は、ネコロビって言うんだ」

「誰に、さらわれたんや?」

「魔法使いガルムスに、さらわれたらしい」

「ふうん。でも、何で俺が手伝わなアカンねん」

「みぃなちゃんは、可愛いんだ」

「何歳なんや?」

「6歳」

「ほんなら、手伝うわ。白雪姫と同じぐらいやんな?、、、芦田○菜ちゃんと同じぐらいやんなぁ?、、、まあ、芦田○菜ちゃん、今は6歳とちゃうけどな。あの当時は6歳やったんや。可愛かったなぁ。。。なぁ、みぃなちゃんって可愛い?」

「超可愛いよ❤︎」

「ほんなら、協力するわ。そして助けて恋人になるんや。ええ話や」

いやいや、ゲハニタスクも相当、危ない人なんじゃないのか?、、、という疑問がネコロビに生まれたが、口には出さなかった。

少年ネコロビと岩ゲハニタスクは、みぃなちゃんを救うために冒険の旅に出る。。。


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最後まで、読んでいただきまして、、、
ありがとうございます😊😃😆