徳村慎
「黒猫」-1
(2020.2.12.)
図書館で本を選ぶ。
本の世界は夢の世界だ。
僕は夢の世界でバスに乗って田園地帯を走っていた。
しだいにバスは街の中を走るようになる。
大阪だろうか?
夢の中の大阪は、キラキラと輝いて見える。
街から街へと進む途中の高架道路の下を走るときに、僕(サブロウ)の父がいた。
高架道路の端(はし)っこでボートのような軽トラックに乗って書類を書いているのだ。
バスの中の同級生Iくんが、「あれサブロウのお父さんやん」と言う。
Iくんは少し意地悪だ。父を馬鹿にしているのだろうか。そして父を馬鹿にすることで僕を馬鹿にしているのだ。Hくんと一緒になって、僕を馬鹿にする。
僕はそんな連中とつるむ自分が恥ずかしい。
大人になってから、Hくんは、電話をかけてくるのだが、どう応対したものか、と考える。
街は駄菓子屋のようなところを行く。僕は色とりどりの駄菓子を見て楽しむ。
駄菓子屋は本を売っていたり、おもちゃや楽器を売っている。駄菓子屋は、デパートでもあり、大学でもある。
知識を得たいのだ。駄菓子を食べれば知識を得られる気がする。駄菓子屋は図書館なのかもしれない。
黒猫の影を見た。
飼っていた黒猫だ。風邪のようなもので動物病院に連れていったが死んでしまった。
あいつは、ここで生きているんだ、と思う。
他人を信用できないで育った。
なぜか僕は馬鹿にされて育った。
馬鹿にされていたことすら知らなかった。
本を盗まれそうになったこともあった。
親が取り返してくれた。
盗もうとしていたのは、AくんとHくんだった。
『冒険図鑑』だった。サバイバル知識について書かれていた。
絵を描いていれば幸せだった。
ボードゲームを作ったりした。
僕(サブロウ)は自分のことを作り手なのだと意識していた。
今でも友達は苦手だ。いや、友達と呼ばれる存在が僕には、もともと、いなかったのかもしれない。
カバ「悲しいね。今でも友達がいない。
でも、それは、サブロウの中では悲しくないことなんだね」
サブロウ「なんだか友達がいないのが当たり前になってしまってね。僕は欠陥人間なんだろうか?」
パンダ「欠陥人間だよ。アマンダちゃんも去ってしまったし」
アマンダ「ここにおるで」
カバ「修学旅行のバスの中は楽しいかい?」
サブロウ「これは修学旅行なんだね。楽しいよ。
みんなで同じところを目指してるってのは」
アマンダ「でも、いずれバラバラになるんやで」
サブロウ「常に興味の方向は内側を向いていた。今さらそれを変えるつもりもないし、変えられるとも思わないなぁ。他人のことに興味ないんだと思う」
アマンダ「他人に興味ない、って状態だから友達いないんだよ。。。」
サブロウ「友達は必要なのかなぁ?
無理して友達にあわせる必要はない気がするなぁ。昔は、こう考えてた。僕と同じ知識を持つ人とだけ付き合いたい、って。でも、本当は、同じく知識を持つ人と出会っても、付き合えないんじゃないかなぁ?」
アマンダ「じゃあ、図書館に行くのは、何のため?
、、、やっぱり、自分の知識を広げるためだけのことなの?」
サブロウ「本ってのは、エンターテインメントだね。哲学書だろうが、科学書だろうが、小説などの芸術書だろうが。。。」
アマンダ「その知識を共有したいと思わんの?」
サブロウ「今は思わないなぁ。昔は、大学に行けば似たような人が集まってるから共有できるって考えてたんだけどね。実は知識は共有なんて出来ないと知った」
アマンダ「私とは共有できんの?」
サブロウ「そっか。。。架空の人物とは共有できるんだなぁ。それは自分の中で作り上げた人物像だから当然なんだね」
アマンダ「本物の私とはどうなん?」
サブロウ「アマンダのモデルの人物とは共有できないんだろうなぁ。。。いや、共有するってことは不可能なんだろう」
アマンダ「なんでよ?」
サブロウ「いや、うつ病の女性で旦那さんの愚痴ばかり言ってる人がいたからなぁ。結婚しても共有できないもんなんだなぁ、と思って」
アマンダ「それって共有したいっていう強い願望があるから、共有できないことで落ち込むんじゃないの?」
サブロウ「たった、それだけのことなのか。はははっ。笑えるね」
アマンダ「サブロウも、そうやろ。共有したいって思いが強いんやろ」
サブロウ「そうかもなぁ。。。」
アマンダ「でも実際は、親兄弟、恋人でも共有は無理やったやんか?」
サブロウ「夫婦は赤の他人、とか、子はかすがい、とか言うもんなぁ」
アマンダ「でも、この理論で行くと、子供でも共有は無理やろ」
サブロウ「親との共有が無理な時点で、無理だよねぇ」
(つづく)
最後まで、読んでいただきまして、、、
ありがとうございます😊😃😆