小説『オレ、トマト』2
徳村慎
オレ、トマト。朝食に半分に切られた。半分に切られたから双子の兄と弟に生まれたのだ。なぁに。半分に切られても半分で生きられるのがトマトってもんだ。
「おい。お前はどう思う?……僕は人間に食べられて幸せとは思わないんだが」とネギが言った。
「いや、そりゃ、そうだけど、冷蔵庫村に住む大半の野菜たちは、食べられたいと思ってるんだぜ」とオレ、トマトが言った。
長老のしなびた柚子が言う。
「お前たちは間違っておるぞ。人間に食べられることが、どれだけ幸せなことか分かっておらぬのか!」
ネギが小声で言う。
「長老は干からびる手前だからなぁ。よほど食べられたいんだろうなぁ」
冷蔵庫村の野菜室の声は響き、冷凍庫の氷たちにも話が伝わった。氷の美少女アイちゃんも「私も食べられたくないよぉ」と言った。
ここでみんなの名前と年齢を語っておこう。
半分トマト(♂)は29歳、ネギの(♂)は39歳、氷の美少女(♀)は10歳。
氷の美少女は言う。
「もっと仲間を探そうよ」
冷凍室の秋刀魚(♂)が言った。
「ワシも仲間に入れてくれや。かつては黒潮の大海原に生きとったワシは、どんな激流にも負けん根性があるでぇ」
氷の美少女がさらに仲間を募る。
「ねぇ。みんな、私たちと一緒に冒険しましょうよ」
冷凍室のパンが答える。
「やなこった。人間に食べられると天国に行けるんだぞ」
野菜室の長老の柚子が言う。
「そうじゃ。その通りなのじゃ。お前たちは天国へと行きたくないのか?」
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