感想
『巨流アマゾンを遡れ』
高野秀行
(集英社文庫)
アマゾン河を遡(さかのぼ)る旅行記。
面白かった。船旅で河をさかのぼる。河に面する街の景色。ジャングル。
最初は色事の話なのかな、と思うぐらい南米のナンパ(プロもアマも含めて)の話が強烈だった。
船旅に飽きてハーモニカを取り出し吹くが船のエンジン音にかき消されて自分で吹いているハーモニカの音が聞こえない。吹き終わるとエンジン音に混ざってハーモニカの幻聴が聞こえる、という記述に、「すごいリアルだな」と感じた。
インディオに会いに行って吹き矢を見せてもらったりする。吹き矢は高い木の鳥を狙うがわずか左にそれた、という。それを見た時にこんなに飛距離があるのか、と驚いたりする。
コカインの密輸していた人に会う話もすごい。コカイン密輸の行われる街では、必ず大金を掴むためには密輸をやっているのだという。ビッグになる人はみんなやってるという意識らしい。
いろんな角度からアマゾンを見た旅行記。最後はアンデスのアマゾン河源流。寒い高山地帯で源流の山を見て感動する姿。現地でもアマゾン河をさかのぼる人は居ないという。アマゾン河のごく一部だけで生活しているのだ。それほどアマゾン河が大きいということなのだ。
アマゾン河の雄大さとその地域に生きる人々と旅行者がすれ違う。本当に運というか一期一会の連続なんだな、と旅の不思議に感動した。
徳村慎