感想『動く人工島』 | まことアート・夢日記

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まことアート・夢日記、こと徳村慎/とくまこのブログ日記。
夢日記、メタ認知、俳句モドキ、詩、小説、音楽日記、ドローイング、デジタルペイント、コラージュ、写真など。2012.1.6.にブログをはじめる。統合失調症はもう20年ぐらい通院している。

感想
『動く人工島』
ジュール・ヴェルヌ
三輪秀彦    訳
(創元推理文庫)


ジュール・ヴェルヌが好きで、久しぶりに中古本を買った。Amazonで何年も前に買いそびれた本を買えるなんて素晴らしいインターネット世界だ。

人工島というアイデアが素晴らしい。奇妙な旅をして最後は人工島の危機と分解。SFの出来となるとH・G・ウェルズの方が小説の流れは上手いと思う。けれども素朴なSFアイデアはものすごく好きだなぁ。素朴な、というのは一応褒め言葉。自分の作りたい物を小説の中に作り上げてどうなるかをシミュレーションしてるという点が素晴らしいと思う。

弦楽四重奏団の4人が主人公だ。ヴェルヌの時代も音楽好きはたくさん居たんだなぁ。こんなことを考えた。クラシックは楽譜さえ有れば再現出来るけど、今の時代は楽譜が有るだけじゃ完全な再現は無理だろう。シンセサイザーの音色変化に至るまで細かく書かれた楽譜なら可能かも知れないが。そう考えればクラシックは再現という点において優れた音楽と言えるのではないか?……特に弦楽四重奏は4人居れば出来るし。ただ、4人だけで音楽をする場合、その技量の差が大きくなる気もするけど。

全体的には『海底二万里』に似ている。『海底二万里』は科学技術を集めて作られた潜水艦で内部は海の博物館であり美術館でもあり、図書館であり、オルガンに置かれた楽譜のコレクションから音楽館とも呼べる。第1部では科学技術の素晴らしさを前面に出し、第2部では悲劇的な運命で終わる。

『動く人工島』も第1部は科学技術と南洋旅行の素晴らしさ、第2部では海賊や島の右舷派と左舷派に分かれての政治的な争いと結果として島が分解してしまう結末が描かれる。

ジュール・ヴェルヌの晩年の作品だという。晩年だから暗いという感じではないと思う。むしろ、これだけの政治的なテーマを明るく戯画化出来た点が明るいとも言える。

僕も『動く人工島』のような自分の想像力の限界まで使った小説を書いてみたいと思うけれど、実際には難しいだろうなぁ。(笑)


徳村慎



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