感想『ヒミズ』 | まことアート・夢日記

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まことアート・夢日記、こと徳村慎/とくまこのブログ日記。
夢日記、メタ認知、俳句モドキ、詩、小説、音楽日記、ドローイング、デジタルペイント、コラージュ、写真など。2012.1.6.にブログをはじめる。統合失調症はもう20年ぐらい通院している。


感想
古谷実『ヒミズ』


何度読み返しても、こういうのってストレートな正直な気持ちとして誰の心の中にも存在するよなぁ、と考える。少なくとも僕は、そうだ。

このマンガから古谷実は作風を脱ギャグマンガになったらしい。これ以降の作品は読んでいないので、分からないが僕が付ける、この『ヒミズ』への評価は高い。

古谷実の『僕といっしょ』と実はテーマは似ているのだ。『僕といっしょ』は中学生の家出からはじまり、安住の地を見つけるという話だ。

『ヒミズ』は一緒にに暮らしていた母が家を出ることで家はあるものの捨てられている話なのだ。そして父を殺し、悪いヤツをやっつける、つまり殺すことを目標にして生きるのだが、最後は自殺してしまう。彼女がそばに居ながら。

『僕といっしょ』を突き詰めて物語をもう一度描き直せば『ヒミズ』になるのだ。

どんな小説家やマンガ家でも同じテーマで書き直すことはある。映画でさえそういうテーマがあると思う。

何故、『ヒミズ』は絶望がテーマなのか。主人公はこの世のものでないものが時々見えてしまう。そしてラストにはそれと会話してしまうのだ。ある種の精神病であることは明白だ。しかし、待てよ。彼の見えているものが本物であって見えていない人の方が偽物の世界で生きているのではないのか?……とも思える。

彼が異常になる過程がリアルに描かれていて気持ち悪いゾクゾク感が何故か読者には快感となっていく。それに周りにも異常な人物は次々に現れる。つまりは自分たちの周りにはこんな奴らがいっぱい居るのだ。

考えてみれば家のガラスを割られたり、家の前に空き缶や吸殻が捨てられたり、玄関をドンドンと叩かれたり、あるいは喪服を着た男に林まで後をつけられて僕がケータイで写真を撮ろうとしたら逃げた奴も居た。普段は忘れているこれらのことも現実に起こっているのだ。田舎でこれだけのことが10年間の間に起こるのだから、人の多い都会ならどうなるんだろうか?……1年間ぐらいで同じことが起こるんじゃないか?……と考えると案外『ヒミズ』はリアルに異常者の存在を描いているのかも知れない。

中学生もキレれば大人を殺すこともあるだろう。これを現実としてとらえれば、誰に会ってもニコニコ出来る人じゃないと生きていけない社会なのかも知れない。僕なんか弱くて狩られる側の人間なんだと認識して当たらず障らず生きていくのが良いのかも知れない。(汗笑)

古谷実は、ギャグも一流だったが、こんなシリアスな物語も一流だと思う。何年もかけて他のマンガも集めてみたいマンガ家である。


徳村慎



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