小説『元カノロボット』
徳村慎
科学者A氏は元カノと再会したときにこう言った。「君の子供が20歳になったら結婚することにする」
「変態」だの「それじゃ母娘丼(おやこどん)」だのさんざん馬鹿にされて科学者A氏は考えた。
そうだ。元カノとそっくりのロボットを作ろう。
そっくりのロボットだと人間っぽさが感じられる。しかし、どうせなら理想を追求しよう。
じゃあ、胸は大きくしよう。ほっぺはもう少し高く。鼻も少し変えよう。手足は長く。
いろんな改良点を加え続けて理想の女性像を作るのに夢中になった。
何度も下絵を描き直してようやく理想が固まりロボットを作りはじめたころにはロボットメーカーから似たようなロボットがすでに販売されていた。
しかも安価で今からロボットを開発するよりも安かった。
購入して元カノの名前をつけた。
ある日、ロボットを連れて歩いていると元カノと街でばったり出会った。
「それ、似てないよね」
と言われて答えた。
「これは元のデザインは彼女であった君だったから、……これが本当の元カノ」
「普通に販売しとるヤツやんか」
「だからいろいろあったんだよ。いろいろ」と言った。
しかし、家に帰ってきて考えてみると、人間の欠点こそが美点であるようにも思われて今度は元カノロボットに改悪点を付け加えてデザインをカスタマイズした。
数年後、街で会った元カノは少し老けていた。
「どうせ、あのころの私には戻れんよ。そのロボット嫌味やわ。腹立つ」
科学者A氏は考えた。
ロボットが嫌味なんじゃなく、僕のキャラに腹が立っているから連れて歩いているロボットにも腹が立つのかな?
元カノロボットを倉庫にしまうと、科学者A氏は次のロボットを製作しはじめた。今度は元カノの娘に似せたロボットだったのだが、はたして……?
歴史は繰り返されたりする。
(了)
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