小説『僕は人間を発明することにした』
徳村慎
科学者Mが言った。
「世界最大の発明とは何か?……人間である」
友人のアユカワは言う。
「お前さあ。いい歳して結婚もせんとおるんは、やっぱロリコンやからか?」
「ちっ違うよお。たぶん違うよお。何?……お前、そんな目で僕を見てたの?……だから人間が最大の発明だから僕はそれに挑戦するんだよっっ」
「だから作るのは12歳ぐらいの少女じゃないのか?」
「んなこと言ってねぇだろ?……10歳だよ」
「それってロボットやろ?」
「もう一度言うぞ。世界最大の発明とは人間である」
「だから、ロボットっちゃうんか?」
科学者Mは静かに語る。
「ま、まあ、凡人にはわからないだろうけどさ」
友人のアユカワが言う。
「だからロボットの美少女を作りたいって話やろ?」
「馬鹿言っちゃいけないよお」
「じゃあダッチワ○フか?」
「ロボットですう」
「ふうん」
「いやいや、だから僕はだね。人間を発明することにしたんだよ」
「何に使うの?」
「いっしょに会話したり、食事したり」
「それから?」
「寝たり」
「ダッチワイ○やんけっ!!」
「だから、そんな性的なことを超越してるんだよ、僕の発明は」
「どんなふうに?……ねぇ。どんなふうによ?」
「ふん。普通のロボットと違う点は食べ物から卵子を製造できて、子宮で子供を作れる点だ」
「すげえ。人間じゃん。ロボットを超えてんじゃん」
「これで僕は結婚することになるのと同じなんだよ」
「ってか10歳の姿の子に産ませる気か?」
「ロボットですからっっ。あくまでもロボットですからっっ」
「まあロボットなら犯罪ではないのか。まあ、いいんか」
「いいだろ。実はもうすぐ完成するんだ。1号機のマリネちゃんは10歳のツルペタ。2号機のオリーブちゃんは17歳のモデル体型。3号機のパスタちゃんは24歳のぽっちゃり系。それぞれ同時進行であと2時間でプログラミングも全て完成する予定だ」
「じゃあ、やらせてよ」
「やだよ。僕の妻たちに手を出すな」
「妻たちって。重婚は犯罪やろ」
「ロボットですから」
「でも子供も出来ちゃうよね?」
「うん。それがどーした?」
「お前育てられるのか?……産まれたらロボットじゃなく人間なんやぞ」
「子育てロボットも製作を計画してある。あらゆる言語に通じてあらゆる情報をインプットした人間の教師では出来ない教育が可能だ」
「完璧じゃん」
「才能のある子供は科学者の後継ぎとして育てるつもりだ」
「その科学者も子供を作るんだよな」
「うむ」
「子孫繁栄するなあ」
「うむ」
「その子供たちもロボットと結婚するんだろうか?」
「食べ物から精子を製造できるロボットも製作してしまおう。そうすれば女の子が生まれても結婚出来ないということが避けられる」
「そうすると人口がものすごく増えて食糧問題につながるんじゃないのか?」
「ふむ」
「そうなると食事が出来ずに卵子や精子が製造出来ずに子孫は作れないな」
「ふむ。では農作業ロボットを製作したりしよう。そうだ。畜産ロボットや養殖漁業のロボットも製作しよう。いや、魚の精子や卵子が製造出来るロボットも製作したほうがいいか」
「するとロボットから生まれた食べ物をロボットやロボットから生まれた人間が食べるのか」
「うむ。そうなるな」
「そうすると、ますます人口は増加するな。それらのロボットも販売されれば世界中の人口が増えてしまうだろう」
「大丈夫だ。そのためにロボットを増やせばいい」
「でも地球上の原子の数には限りがあるから、ある程度からは食糧問題は解決しなくなるぞ」
「火星に行って人間が住めるようにして大農場を作ればいいのだ」
「火星の原子も使い果たすぞ」
「太陽系中を飛び回るんだ。それも限界が来れば太陽系を出て惑星を探せばいい」
「宇宙の原子を使い果たすことってないんだよな?」
「さあ?……とにかく僕は人間を発明することにした。これからはブサイクだろうが貧乏だろうが安価なパートナーを手に入れられるのだ」
「しかも自分好みのやつをな。なかなかな発明だ」
「だろう」
「でも、ロボットにもひとりっ子政策の法律なんかが作られなきゃいいがね」
「それは困る」
「ロボットにも一夫一婦制とかな」
「それでは僕は何のために発明をしているのかがわからない。ハーレムを作るのが長年の夢だったんだ」
「それに、子孫繁栄しすぎて人間を抹殺しようとする科学者が生まれてこないのだろうか?」
「……ちょっと心配だね」
(了)
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