小説『リアルヒューマンシンドローム』
徳村慎
労働者は全てロボットにかわっている時代。人間は生殖能力がしだいに衰えて子どもがいなくなった。
子どもの形をしたロボットが量産されて街に活気がもどった。
ロボットをわが子や孫のようにかわいがり、オモチャや楽器や服を与える人々。
そのうちに自分のロボットが本物のように思えてくるのだった。
リアルヒューマンシンドロームと呼ばれたこの精神病で人々は全ての動物とロボットの区別がつかなくなった。
気に入らない人間を殺してかわりのロボットといれかえるビジネスがはやったりもした。
コンキは本物の人間だった。
そして仲間になってくれる本物の人間を探していた。
しかし、街に出ても誰が本物なのかはわからなかった。
コンキは今日、心臓と脳の手術をした。ロボットの心臓や脳といれかえる手術だ。全自動の家庭用の手術マシンでできるから簡単だ。
コンキは、心臓と脳以外はすでにロボット化された人間だったのだ。では心臓と脳をロボット化したコンキは、もはやロボットなのだろうか?
ロボットにもそれぞれの脳が与えられた世界ではロボットも精神病にかかる。
リアルヒューマンシンドロームにかかったロボットたちは誰もが本物の人間なのだと信じて生きている。
世界から人間が消えても、この世界は動き続けるのだった。
(了)
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