感想
岩井恭平(原作:細田守)『サマーウォーズ』
3度ぐらい泣いた。大ばあちゃんである栄(さかえ)が電話をかけまくるシーン。プログラマーである侘助(わびすけ)が幼少の頃に栄と手を繋ぐシーン。「勝ちそうだから戦うとか、負けそうだから戦わないとかじゃないんだよ。戦うべき時だからこそ戦うんだよ、ウチはな。それも毎回」と万作(まんさく)が言うシーン。
感動する小説を読んでも、中々涙を流す事は無い。何か自分と重ねる部分が涙に繋がるのだ。何処が繋がったのかは分からない。意外に自己分析は難しいのだから。
此の小説は初めて読むのだが、映画版は観ている。細田守のアニメ作品は『時をかける少女』『サマーウォーズ』を観ているが、どちらも素晴らしい作品だ。ジブリ作品に続く日本アニメのスタンダードとなるだろう。
この『サマーウォーズ』は、……バイトで憧れの先輩夏希(なつき)の田舎に連れて来られた数学オリンピック代表の成り損ないの少年が主人公。いやいや、成り損ないっていっても凄い話なのだが。田舎で彼氏役を演じるのがバイトだと知らされる。そして人工知能(AI)がネットの中で暴れ出し、其れを食い止めるのが夏希の大家族。……というストーリーだ。
今年読了した本の2冊目。中々に楽しいエンターテイメントだった。涙するぐらい感動して楽しい本だ。今年の1冊目が桐野夏生『OUT』でリアルなスタイルの小説だったのに対し、『サマーウォーズ』はライトノベル。しかし、何故かライトノベルの方が泣けたのだ。文学はリアルに描けば泣ける物でも無いらしい。まあ、日本の進化を遂げた最先端の小説がライトノベルなのだから当たり前と言えば、そうなる。『OUT』には良さが有り、『サマーウォーズ』には又、別の良さが有る。どちらも読めて良かった。これからも良いライトノベルを読みたいと思う。
徳村慎
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