(**蠅の一生を物語にしました。…と書いておく。結構グロいです。)
血が俺の手へと流れ込む。生温かい。グニュグニュ、ブヨブヨとした世界で一気に頭を突っ込んで進んでいく。しかし、気付いた時には俺の体が動けなくなっちまっていた。体中が締め付けられて出口を見つけられない。君は俺を助けてくれるかい?そんな筈は無いなあ。だって地上に居るんだから。俺は何処にも行けないのさ。笑えてくるぜハッハッ。俺はようやく死体の山の一部に成るらしいぜ。ドアの向こうが何だったのか、今頃気になって来やがる。けれども俺は後戻りは出来ない。選択出来たのはあの部屋の中でだ。今じゃ、じっと身動きも取れずに死んだ様に寝ているだけさ。本当に眠くなってきやがる。うとうとしていた。目が覚めると菌類が光り始めていた。俺の体を食い尽くして、さらに光ろうとしているらしい。しかし、美しい。俺は体から力が抜けるのを気持ち良いと感じ出した。菌糸が体内を溶かしていく。俺は死体になっていく。なっていいんだぜ、ベイベー。ヒャッホーウ。俺は遂に見つけたんだ。此れが本当の出口さ。しかし、俺は菌類で出来た穴ぐらに嵌まり込ん
だ。ぬるりと菌糸から抜け出す。俺の体の周囲の死体が溶けていたらしい。俺はやたらと煙草が欲しかった。こんな球状の部屋で、何をすりゃいいんだ?君だって笑うだろうぜ。菌類の光で全身血まみれのズブ濡れの服を付けて、丸くなって何も出来ない俺の姿。菌類で出来た壁に呼吸している穴が有る。俺は思い切り指を突っ込むのさ。もう何も考えちゃいねえ。指は二本に増えて手首を丸ごと吸い込んで腕が奥まで引っ張り込まれる。ドロドロの粘液が流れ出している。菌類の光は弱くなった。もうこの菌類は死ぬんだな。俺は一本の腕を動かして穴を広げようとする。完全に暗くなると大量の粘液が俺の腕ごと穴から噴き出した。ドロドロの粘液の中で俺は空気を見つけようとした。粘液はすぐに狭い穴ぐらを満たした。君は体が溺れているのが見えるかい?ガリガリとドアを引っかく音。多分まだ部屋の外には犬が居るんだ。ガリガリ。俺はドプンと液体の中に沈んだ。
了