美術室。桜が入ってくる。「ただいまー」
山本が言う。「ただいまじゃねーし」
美智は「お帰りー」と言ってニヤニヤしている。続けて美智が言った。「桜ー。2年の男子と付き合うん?」どうやら、告白された事を泉から聞いたらしい。
「付き合わんよ、あんな男子」
「確かに。3年生ともなりゃ、受験勉強あるからねー。スポーツ系は夏まで、文化系も文化祭までやしね。忙しいもんね」
泉が冷やかす。「でも、結構、可愛いんやで」
美智もノリノリになって身を乗り出す。「桜ちゃん、どんな子?」
「何(なん)かね。バスケ部をアキレス傷めたとかでやめたんやって。それで軽音楽同好会に入りたいって言っとった」
「それって、もちろん桜ちゃん居(お)るからやよねー」と美智。
泉が言う。「もちろんやろ。桜ちゃん可愛いもん。年下から告白なんてドラマチック」
桜は「まあ、私を好きやっていう情熱だけは認めるけどねー」などと言う。
美智が、また悪ノリする。「山本君、ライバル出現やん。恋のライバル」
「えっ?山本君、桜ちゃんの事、好きなん?」と泉。
「うるさいわ。勝手にお前らが言いやるだけやろ」と山本。
桜が話す。「それよりさー。あの翔って子、軽音入るんやったら、アサミか奈々に言やええんやよ」
「奈々さんってアサミー・メイデンのドラムの子やよね」と泉。
桜が、うなずく。「実は、翔って子と奈々は、知り合いらしいんやよ」
「へぇー。じゃあ、奈々さんが恋のキューピッドか。キューピッドはエロースとも言うんやで」図書部の泉が知識を出す。
「エロス。危険やわ。大人の恋愛?」と美智。
「ハハハ。桜ちゃんには無理やで、みっちゃん」
「女王様には、なれるかもよ?」
「それって、どんなんよー?」
「泉も興味あるんやー?わー。スケベー」
桜が浮かない顔で言う。「泉ちゃん。今日は私、帰るわ。何(なん)か疲れて」
「うん。分かったー。翔君の事、考えたりなーよ」