桜と泉の2人は、杏たちが練習している教室に入っていく。
「すみませーん。ちょっと見学させて下さーい」と泉が声を掛ける。
「ああ。かまんで」と保健体育の大西先生が言いながら、シンバルをレガートする。(レガートとはジャズの刻みの事)
かなり複雑なスケールで難解なジャズをやっている。ギターソロが終わって合流するサックスの新(しん)。ベースレスのジャズトリオは一体になって呼吸している。そしてテーマを演奏し終えて、曲が終わった。
「ねぇ、杏ちゃん。今のスケールどんなのなん?」
「ああ、スパニッシュエイトやよ。クロマチックでアプローチする所もかなりあるけど」
泉がカードを見ている。
「コレかな?SpanishScale…C、D♭、E♭、E、F、G、A♭、B♭、Cやね」
「何そのカード?」と桜。
泉が答える。「カオシレーターのスケール表やよ。スケールを設定できるんよ。カオシレーターは」
「そうか。奇怪な即興曲ってさァ、スケールを複雑にしたら出来るかも。杏ちゃん、ありがとう。ヒントもらったで」
「さすが私のライバル。何(なん)かつかんだんやね」と笑う杏だった。