桜は、音楽室の向かいにある美術室にやって来た。
「美智ィー。助けてー。」
美術室に入ってくるなり、乱暴に楽器を床に置き、絵を描いている美智に正面から抱きつく。
「わー、レズ居(お)るー。」
「じゃかましわ、デブ山!」
「デブ山じゃねーし。ハア?大体ちょっと顔が可愛いからって性格悪過ぎるぞ、お前」
「ホメても好きにならんで」
「ホメてねーし」
「山本君、本当は桜ちゃんのコト好きなんやでー」
「茶化すなよ、部長」
実は、美智は絵が上手くて美術部の部長なのである。
一通り話し終わった桜が、ため息をつきながら言う。
「あーあー。
どうしよっかなー。
バンドないんじゃ、つまらんなー。
誰か私とバンド組みたい人ー…っておらんかー。
美術部やもんね、アンタら」
「そーいや、図書部の泉が時々ココに来るんやけどねー」と美智。
「ああ、アノ、オタク女?それがどーした?」
「何(なん)か楽器持っとったで。タッチパッドのやつ」
「何ソレ?私があんなオタクとバンド組まなアカンの?そりゃキツい冗談やぞ美智ー」
「何(なん)かソレでテクノを作りやるってさ」
「テクノ?普通、テクノにギターは要(い)らんやろ」
「いや、それが、アンダーワールドっていうバンドは、テクノにエレキギターでやりやるんやって泉が言っとったよ」
「テクノねぇ?どうやろ?ま、いっぺん、当たってみるか。前進あるのみ。我々はサルから進化したのだ」
「お前の場合、退化しとるんちゃうか?」
「デブ山、じゃかまし!」
「山本君のことデブ山って呼ぶの可哀想だよ」
*筆者のカバパンダは同性愛を差別していません。
