終日、サングラスをかけていた。
持っているサングラスはほぼ全て度入りだ。それらのサングラスの他、眼鏡もたくさん持っているが、実際に使用することは特に眼鏡はほぼ皆無だ。サングラスでさえ、年に数えるほどしか使わない。
使いもしないがわりとよく新しく眼鏡や度入りのサングラスを作っている。場所的に便利なので東京ミッドタウン六本木がオープンして十数年以上になるがガレリア一階の眼鏡屋で揃えている。
使わないことに理由は全く無い。使いもしないのにただ何と無く新しく作ってしまうことにも何の理由も無い。
0.01という視力なので一般的には眼鏡が必須なド近眼だが、コンタクトレンズは使用したことは無いし選択肢には無い。
普段、見えないままで何ら不自由が無いので、日常の必需品の中に眼鏡が入ることはこの先も無いだろう。
昨日は出掛けにサングラスや眼鏡を並べたケースを見ていて、何と無くその中から度入りのサングラスを手に取ってかけてみて、そのまま出掛けた。
夜、食事の待ち合わせをした友人女性から「サングラス素敵ね」と言われてサングラスをかけていることを思い出した次第で「かけていることを忘れていたわ」と応えると「そうじゃないかなと思った」と友人は笑った。「道理で今日は色々すっきり見えていると思った」と言い、サングラスを外すと一気に視界が明るくなったが、視界全体が一気に霞み、眼前の友人の輪郭が滲んだ。
海外を頻々と往復していた頃、セーシェルの幾つかの島を巡った時、持参していたサングラスを何処かで落としたのか置き忘れたのか分からないが気付くと無くなっていて、強い陽射しの中、サングラス無しで過ごした。
デニス島のプライヴェートビーチの群を抜いた美しさやプララン島のビーチ、ラディーグ島のアンス・スース・ダルジャンの浅瀬に点在する圧倒的な巨岩群など、どの島も圧巻の美しさだったが、気付けばサングラスは無くなり、途中、安いサングラスを購入したが本当に安いサングラスだったので紫外線を目が浴び放題となった。
全身は無防備に紫外線を浴びて日焼けしきっていたがそれは慣れているのでケアもしないままだが、その時、眼球を傷め、帰国してから暫く眼科に通った。
夕食を共にした友人女性は学生時代から四十数年来の付き合いだ。
昨日は被っていなかったが、彼女は洋装の時は帽子をよく被っている。そして、よく似合っているので、彼女に会うと帽子を被りたくなる。
昨日の友人は着物だった。着物もとてもよく似合っていて、ここ二、三年たまたまバッタリ遭遇すると着物のことが多い。
特別な用事とかには関係無く、最近はちょっとそこまで、という本当にちょっとそこまでの気軽な外出に彼女は着物で出掛けていると言っていた。
和装の彼女は洋装とはまた雰囲気が変わってとてもよく似合っているので、着物も良いなとは思うがそれ以上気持ちは動かない。せっかく色々持っているのだから着れば良いのにと昨日も言われた。
普段、出掛ける時の着替えは二分くらいだろう。
クローゼットを開けた瞬間に手に取ったものを身に着けているので、天候や気温や季節から大きく逸脱していることが多い。メイクもおざなりにパウダーし、眉を描き足すとかルージュをひくとか、一分で済むような手抜きで、実際、一分で済ませるので着替えを入れても身支度はどんなにゆっくりぐずぐずしたとしても五分に満たずに完了する。髪はヘアサロンに行くから梳かしたことも無い。
いやはやヒドイなあと思わなくも無いが、まあいいか、で済ませている。
身の回りの何もかもが、まあいいか、だ。事の大小や深刻度は関係無く、全て、まあいいか、となる。実際には何らかの対応はしているが、気持ちに留め置かない。何しろ、まあいいかで済んでしまっているので。
いやはや。
friday morning白湯が心地良く全身に巡り渡る。
本日も。薄い。