(2009/5/16 修正)
●ヒルベルトスキームの意義は,すべての対象を含み,大域的であるという意味の普遍性だけでなく,
「族」のbase spaceとなりうるという点が重要なのであった.ヒルベルトスキーム上には「族」が作れるわけである.
しかし,ヒルベルトスキームは,「ある固定された射影空間 P^n に埋め込まれたK3曲面の集まり」のように,代数的K3曲面に対してしか考えられない.
●次に,K3曲面の場合は,「周期」 がある.
大域的なトレリ型定理は,(適切に定義された)周期が(marked) K3曲面の複素解析的同型類を決めること(周期写像の単射性)を主張している.
●ある固定された射影空間 P^n に埋め込まれたmarked polarized K3 surfacesを考える場合は,
Piateckii-Shapiro and Shafarevichの論文(1971)のように,
周期としては,holomorphic 2-forms のなす複素直線を考えるだけでよい.
その周期の領域は,19次元の周期領域 Ω(l) である.
polarization を固定している場合は,この周期を考えるだけで,effective classes がeffective classes に移されるというアイデアが,Piateckii-Shapiro and Shafarevichの論文(1971)に述べられている.
また,ヒルベルトスキームが使えるので,族も構成できる.
●(代数的とは限らない)markedK3曲面の場合,
周期は,([α_C(η)],α_R(κ)) を\tilde{Ω}にprojectしたところのBurns-Rapoport周期を用いる.
この周期は,holomorphic 2-formだけでなく,Kaehler cone の情報も含んでいる.なぜなら,
「代数的とは限らないmarked K3曲面に対するThe global Torelli theorem」
のstatementからわかるように,unpolarized な marked K3曲面 X に対しては,holomorphic 2-formのH^2(X, Z)における直交補空間であるところのPicard格子 Pic(X) だけでなく,その中のeffective classes の集合が重要なのである.別の言い方をすれば,Kaehler coneが重要.
この要請を満たすため,\tilde{Ω} は,non-Hausdorffな解析空間となってしまっている.
しかし,このような空間を考えないと,その上に族がうまく構成できない.
(註) effective divisorで代表されるルート (自己交点数-2のclass)の全体をΔ^+(X)と書き,
「Δ^+(X)の元における鏡映」で生成される群を W(X) とすると,その基本領域 C(X) (⊂ Xのpositive cone) は,
C(X) = {x ∈ Posi(X) | <x,Δ^+(X)> >0 }
であり,X の Kaehler cone と呼ばれるのだった.
この辺の議論の詳細(定理の証明など)については,[BHPV]参照.
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歴史的に先に得られた「局所トレリ型定理」のほうは,
倉西族(普遍な族)のbase spaceから周期領域への周期写像が,
局所的複素解析的同型写像(よって局所的に全単射)であることを主張している.