参考文献:
[BHPV] 第8章 K3 surfaces and Enriques surfaces (p.332)
金銅誠之 「二次形式とK3曲面・Enriques曲面」,数学 42-4 (1990). 定理3.3 (Torelli型定理)
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記号の定義 (この記事 に書いたことを再掲)
XをK3曲面,ω_Xをa nowhere vanishing holomorphic 2-form on X とする.
PicX = S_X = (ω_X)^⊥ ∩ H^2(X, Z) (Picard lattice)
T_X = (S_X)^⊥ ∩ H^2(X, Z) (超越lattice)
とおく.
Δ(X) = {δ∈S_X | δ^2 = -2 } (Xの"ルート"たちの集合)
とおく.
H^{1,1}(X)_R := H^{1,1}(X) ∩ H^2(X, R)
とおく.
{ x ∈ H^{1,1}(X)_R | <x, x> > 0 }
は,2つの連結成分(cones)からなるが,XのKaehler classたちは,そのconvex subcone をなし,2つの連結成分の片方に含まれる.そちらを,
C_X
と表し,Xのthe positive cone と呼ぶ. ([BHPV], p.307を参照)
Δ(X) = Δ^+(X) ∪ -Δ^+(X) (disjoint union),
ここで,Δ^+(X) = { δ | δはeffective divisorで代表される }
という分解ができる. ([BHPV], p.311~p.312参照)
C^+_X = {x ∈ C_X | <x, Δ^+(X)> > 0 }
とおく.
これは,Xのthe Kaehler cone に一致する.([BHPV], p.312,Coro3.9参照)
Δ^+(X)の元で決まる鏡映 s_d (Picard-Lefschetz reflections) で生成される群を
W(X) とおくと,その基本領域 (⊂C_X) は,C^+_XのC_Xにおける閉包となっている.
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Theorem 11.1
(The global Torelli theorem for K3 surfaces,
Pjateckii-Shapiro and Shafarevich,
Burns and Rapoport)
X, X' をK3 surfaces とし,effective Hodge-isometry
φ: H^2(X',Z) → H^2(X,Z)
つまり,φは,isometry H^2(X',Z)→H^2(X,Z)で,
● C-linear extension φ_C が Hodge分解を保ち,
(これは,K3曲面の場合は,H^{2,0}(X') を H^{2,0}(X) に写すこと,すなわち,
[ω_X'] を [ω_X] に写すことと同値である.)
(ここまでなら,Hodge-isometry )
● φ_R が positive coneをpositive coneに移し,かつ,
the sets of effective classesの間のa bijectionを誘導する.
(このことは,Prop.3.11 より,φ_R が
X' のthe Kaehler cone を X のthe Kaehler cone に写すことと同値である!)
が存在するとする.
このとき,
φ= f^* となるbiholomophic map f : X → X' が存在する.
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Corollary 11.2 (Weak Torelli theorem)
X, X' をK3 surfaces とし,Hodge-isometry H^2(X',Z) → H^2(X,Z),
すなわち,isometry H^2(X',Z)→H^2(X,Z)で,
C-linear extension が Hodge分解を保つ,
が存在すれば,X, X' は複素解析的に同型である.
Proposition 11.3
X をK3曲面とする.X上の自己同型で,H^2(X,Z)上identityであるものは,
それ自身,identtityである.
Colollary 11.4
Theorem 11.1 において,φ= f^* となるbiholomophic map f は一意的である.
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コメント:
Theorem 11.1 (The global Torelli theorem) よりわかること:
(X_1, ψ_1), (X_2, ψ_2) を2つのmarked K3曲面とする.
(つまり,
ψ_1: H^2(X_1, Z) → L,
ψ_2: H^2(X_2, Z) → L を isometry とする)
このとき,
(i) (ψ_1)_C ([ω_{X_1}]) = (ψ_2)_C ([ω_{X_2}]) (周期が同じ).
(ii) (ψ_1)_R (X_1 のKaehler cone) = (ψ_2)_R (X_2 のKaehler cone).
ならば,
(ψ_2)^{-1} o ψ_1 = f^*
すなわち,
ψ_1 = ψ_2 o f^*
となる複素解析的同型写像 f : X_2 → X_1
が存在する,
すなわち,marked K3曲面として,
(X_1, ψ_1), (X_2, ψ_2) がisomorphicであることになる!
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以前の記事 で述べたように,
K3曲面 X 上の複素解析的同型写像(自己同型) r : X → X があるとき,
r^* : H^2(X, Z) → H^2(X, Z) を考え,
Lの自己同型 φ o r^* oφ^{-1} により,(X, φ)のmarkingを替えると,
marked K3 surface (X, φ) は,別のmarked K3 surface (X, φo r^*) に変化する.
ところが,これらに対し,(従来の)「周期」を考えると,
φ([ω_X]) = φo r^*([ω_X]) (同じ)
となってしまうのでした.
そこで,marked K3 surfacesを区別するために,
上の定理11.1のeffective Hodge isometryの考えに基づいて改良された周期が,
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以下は,
Shimada氏によるK3曲面の研究 より(勝手に)引用させていただきます(Shimadaさんに感謝)
こちらの原稿によると,
定義:
標準束が自明となる,滑らか,完備な代数曲面は,その不正則数が0であるとき,K3曲面と呼ばれる.(これは,スキームで「代数曲面」であるものたちの中でK3曲面とは何か?という定義ですね)
K3曲面はアーベル多様体とはちがって,もはや代数群としての構造をもちません.それだけに複雑かつ微妙な幾何学的構造をもっています.
複素K3曲面
複素K3曲面の理論でもっとも重要なのは,次の (弱)トレリ型定理です.
定理
2つの複素K3曲面が与えられたとする.
両者の整数係数2次コホモロジー群のあいだに,
交叉形式を保ち(isometry),かつ周期を周期に移す同型が存在するならば,
2つの複素K3曲面は(複素解析的に)同型である.
したがって,周期が与えられればそこからもとのK3曲面の幾何学的構造を再構成することが原理的には可能です.近年の計算機の著しい発達により,この再構成が理論の上だけでなく実際に可能となってきました.
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2009年8月12日のShimadaさんの講演より
ADE特異点を持つ6次曲線で分岐するP^2の2重被覆の多くの例.
Picard群のランクが20であるようなK3曲面を,(非特異K3曲面であっても) singular K3曲面という.
ある種のK3曲面の特徴づけが,数論でも使える用語で述べられた場合,
その性質をもって,その種のK3曲面の「数論的バージョン」の定義する.
証明の道具・・・・「class field theory」など(?)
任意の有限アーベル群を与えて,それを被覆変換群とするP^2のエタール被覆.
(2009/8/15 追加)