2-elementary K3曲面のモジュライ空間 | K3 surfaces with involutions

K3 surfaces with involutions

Local and global Torelli theorems for complex K3 surfaces, periods of K3 surfaces, non-symplectic holomorphic involutions, anti-holomorphic involutions, Hilbert schemes of K3 surfaces, Nikulin's lattice theory, lattice-polarized K3 surfaces. . .

2-elmentary K3曲面のモジュライ空間

(注意: この記事は,下記論文からの引用です.著者に感謝致します.)


参考文献:

 Ken-Ichi.Yoshikawa:

 「解析的トーションとモジュライ空間上の保型型式」,

  数学 52-2,142--158,(2000年4月)



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X をK3曲面とする.L_{K3}を the K3格子とする.isometry

    φ: H^2(X, Z) → L_{K3}

markingといい, (X, φ)をmarked K3 surfaceという.

marked K3 surfaces のモジュライ空間とその上の普遍族が存在する.([BHPV]参照)

しかし,これは,保型型式を考える舞台としては適切ではない.

自然な離散群 O(L_{K3})がこれに真性不連続 (properly discontinuously) に作用しないことが理由の1つ.


そのため,(格子による)偏極を固定したモジュライ空間を考える.

Hodge指数定理から,偏極はhyperbolic (Lorenzian) lattice で与えられる.


K3曲面Xに対して,S_XをPicard格子,T_Xを超越格子とする.


定義2.1

S をL_{K3}のprimitive hyperbolic sublatticeとする.

K3曲面XがS-K3曲面であるとは,

markingφが存在して, S⊂φ(S_X)が成り立つこと.

このようなmarkingを,「S-K3曲面のmarking」という.

(markingφをひとつ選んだら,marked S-K3曲面 (X, φ) と呼ぶ.)


定義2.2

marked S-K3曲面 (X, φ) に対して,その周期 π(X, φ) と周期領域

              Ω_S

を次のように定める.・・・・原論文参照・・・・・




定義2.3

偶格子Sが2-elementaryであるとは・・・・原論文参照・・・・・



2-elementary格子による偏極の特殊事情として,

コホモロジー上の自然な対合が幾何学的な対合に拡張されることがあげられる.

詳しくいうと,

L_{K3}の部分格子S+T上には,自然な対合I_S(x,y)=(x,-y) (x∈S, y∈T)がある.I_SはL_{K3}上の対合に一意的に拡張され,これは,markingを通して,勝手なmarked S-K3曲面(X,φ)のコホモロジー格子上の対合を定める.

Tのルート(その2乗が-2の元)の全体をΔ_Tとする.

Tのルートdに対する鏡映面をH_dとし,そのすべての和集合をD_Sをおき,Ω_sのdiscriminant locus という.


       (Ω_s)^0 := Ω_s \ D_S


とおく.

K3曲面に対するTorelli定理([P-S-S])から,以下が結論される:

π(X, φ) ∈ (Ω_s)^0 ならば,X上に,

(1) ι^* = φ^{-1} o I_S o φ

(2) ι^*ω_X = ω_X (反シンプレクティック)

を満たす正則対合 ι が一意的に存在する.


定義2.6

反シンプレクティック対合を持つ(代数的)K3曲面を,2-elementary K3 曲面という.(X, ι)がS-2-elementary K3曲面であるとは,marking φが存在して,

ι^* = φ^{-1} o I_S o φ となることである.


定義2.7 (Yoshikawa)

O(T)の指数有限部分群Г_Sが存在して,S-2-elementary K3曲面のモジュライ空間は,(Ω_s)^0 / Г_S と同一視される.以降,

    M_S := Ω_s / Г_S,

    (M_S)^0 := (Ω_s)^0 / Г_S

と書く.


Ω_s の連結成分を(Ω_s)^± とし,(Ω_s)^+ (したがって ,(Ω_s)^- も)を保つГ_Sの部分群を(Г_S)^+ とすれば,

    M_S := (Ω_s)^+ / (Г_S)^+

である.以降,周期領域は,片方の連結成分 (Ω_s)^+ のみ考える.

M_S, (M_S)^0 は,準射影的代数多様体であることが知られている.


discriminannt locus D_S は,S-2-elementary K3曲面の対合が退化する軌跡である.H_d の一般の点には,nodeを1個持つK3曲面とその上の反シンプレクティック対合が対応する.


周期領域 (Ω_s)^+ はIV型Hermite領域である.


p.150

例1 S=A_1 とする.A_1 - 2-elementary K3曲面 (X, ι) は,P^2上の非特異6次曲線で分岐する2重被覆であり, ιは被覆変換として作用する.

(X, ι) に,非特異平面6次曲線 X^ι (固定曲線) を対応させることにより,

M_(A_1))^0 は(H_6 - D_6)/PGL(C^3) と同型.

ここで,H_6 = P(Sym^6 C^3).

(ここで,Sym^6 C^3 は複素3変数6次斉次多項式全体)


例2 S=U(2) とする.U(2)-2-elementary K3曲面 (X, ι) は,P^1 x P^1上の非特異(4,4)次曲線で分岐する2重被服であり, ιは被覆変換として作用する.

(X, ι) に,(4,4)次曲線 X^ι (固定曲線) を対応させることにより,

M_(U_2))^0 の適当なZariski開集合と,(4,4)次曲線のモジュライ空間は同型.



(2012-4-28修正)