格子(integral symmetric bilinear forms) には,同型類よりも粗い分類である,「種 (genus)」という概念があり,Nikulin の論文には頻出します.
定義(Gauss, Minkowski (Milnor&Husemoller p.43より) ):
格子(integral symmetric bilinear forms) X, Y が同じ種(genus)に属するとは,
任意の素数 p (=2, 3, 5, 7, ・・・・) とp=∞に対し,
X, Y を p進整数環 Z_p 上に拡張した形式が,Z_p 上同型なことである.
(ただし,Z_∞ = R とみなす.)
注意:
格子に対して,
determinant (discriminant) (=表現行列の行列式),
parity (evenかoddか)
signature (l_+, l_-)
は,種の不変量(genus invariants)である.(種が同じならば,同じ値になるということ)
定義(偏極対合付き格子(polarized integral involution )の種,Nikulin)
偏極対合付き格子(L, φ, h), (L', φ', h') が同じ種(gemus)に属するとは,
任意の素数 p (=2, 3, 5, 7, ・・・・) とp=∞に対し,
(L,φ), (L',φ') を p進整数環 Z_p 上に拡張したものの間のZ_p 上同型写像で,
h を h' に写すものが存在することである.(ただし,Z_∞ = R とみなす.)
定義(条件付対合付き格子の種,Nikulin):
type(S,θ)の対合付き格子(条件付き対合付き格子) (L,φ), (L',φ') が群Gに関して同じ種(gemus)に属するとは,
SからSへのある自己同型ξ(∈G)が存在し,このξが,
任意の素数 p (=2, 3, 5, 7, ・・・・) とp=∞に対し,
(L,φ), (L',φ') を p進整数環 Z_p 上に拡張したものの間のZ_p 上同型写像に
拡張できることである.(ただし,Z_∞ = R とみなす.)
コメント:
Nikulinの理論では,まず,偏極(あるいは条件付き)対合付き格子の種(genus)を表すような,有限個の種の不変量の組を見出す.次に,それらの不変量の取り得る値の組をすべて数え上げる,ということを行います.
したがって,各不変量が何からの幾何学的性質を表しているならば,その性質の起こり得る場合をすべて知ることができます.
少ない例外を除いて,対合付き格子の種(genus)は,同型類に一致しています.例えば,偏極対合付き格子の場合,同型類が,対応する実K3曲面のモデュライの連結成分とbijectiveに対応しているので,種よりも,同型類を知りたいわけです.
種と同型類に違いがあるかどうかを調べる際の2次形式に関する議論は,(私には)難しいです.
type(S,θ)の対合付き格子(条件付き対合付き格子)の分類のときに出てくる群Gは,O(S,θ) (=Sの自己同型でθと可換なもののなす群) のある指定された部分群です.
当然,Gが大きいほうが粗い分類になります.しかし,Sの階数が2以下の場合の具体例では,G={恒等変換}であることが多いです.