壁画のできるまで・その7 | こうのの日々

こうのの日々

漫画家こうの史代です。
夫とキエリボウシインコのTさんと、福知山市で暮らしています。

こんにちは! 

おりづるタワー「Wall Art Project `2045 Nine Hopes‘」

Nineのうちの1人、こうの史代です!

というわけで、壁画を描いていた先月の様子を振り返っています。

 

<15日目> 3月17日

葉っぱもひと通り描き終わりました。

赤い絵の具を紙コップに出して、文章の始まりの鳩と、文章の終わりの鯉に、カープ帽をかぶらせました。

 

あとは、絵の具が垂れたところや失敗したところを修正してゆきます。

 

ところで。

般若心経には印象深い言葉が3つ登場します。

前半に繰り返し登場する「空」「色」。そして中盤の主役「無」です。

このサンスクリット語版は、巻頭と末尾の数文字以外は、漢字版とほぼ同じ流れです。

なので、それぞれに目印をつけることで、漢字の経文と照らし合わて楽しめるようになるかな…? と思いました。

 

今日は、合計20字くらいあった「無」に目印をつけ忘れていないか、確認してゆきました。

どんな目印かは…ごめん! 大きい写真撮り忘れた!!

下の画面の右端中央の青と黄緑の混じった文字が「無」です。分かりにくいですがナイナイナイ…という動作を表わしています。

 

17時半頃、帰り際に、右の掌に文字に使った絵の具の残りを塗って、壁の右端に手形を押しました。

 

<16日目> 3月18日

昨日までとはうって変わって、冷たい雨です。

わたしは雨女なので、人生の、ここぞという日はだいたい雨です。

今日はその、ここぞという日です。

そう。

人生初の壁画を完成させる日になる予定なのです!

 

前半の主役、「空」と「色」に目印をつけてゆきます。

「空」の周りには白で雲を描きました。

「色」には花を描きました。カタバミの葉を散らしたので、カタバミの花にしようと思いました。在来種のカタバミは黄色の花ですが、すでにレモン色を文字で使ってしまったので、昨日赤ヘルを描いた絵の具に白を混ぜ、ピンク色のイモカタバミの花にしました。

そして、ちびちび修正していたら、あっという間に14時になりました。

 

テレビや新聞の取材の人が集まってきました。

壁画の担当者Nさんを聞き手に、作品の説明をします。

撮影されながら、昨日押した手形のそばにサインを書き込みました。

その後、おりづるタワーの職員さんが集まってきました。

また作品の説明をします。

その後、またテレビや新聞の人の取材を受けます。

 

もはや、誰に何度同じ話をしたか、あるいは全くしていないかも分かりません。

 

頼まれたサインをしていたら、新幹線の時間が迫って来て、片付けの時間もとれませんでした。

田中美紀さん夫妻が、車で広島駅まで送ってくれました。

壁画とも、仲間の皆さんとも、慌ただしいお別れとなってしまいました。

 

<17日目・最終日> 3月24日

描き終えたはずですが、人が多くて全体を確認できなかったことがずっと気になっていました。

なので、前日に最終の高速バスで福知山を出発し、もう一度だけ見に来ました。

 

足場から見ると、旧市民球場のへりの雪柳が、もう満開です。

 

さいわい、大きな見落としはありませんでしたが、細かい修正はいくらでもあります。

 

前回の翌日3月19日から、おりづるタワーは平日も営業を再開しました。

直していると、何人もお客さんが通ってゆきました。

「これは何語ですか」と聞かれました。

「足場が取れるのはいつですか」と聞いてくれる人もいて、嬉しかったです。

足場からの景色も見納めです。

今度こそ作業を終えて、夕方おりづるタワーを後にしました。

 

ではまたね!