171_葬られた本の守り人 | mimi 読書三昧

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ブリアンナ・ラバスキス

高橋尚子 訳

小学館

2024年5月発行

 

お初の著者さんです。

そして・・

 

 

もうもう・・今月のベストはこれで決まり!!

なんなら今年のベストでも良いかもしれない

高いけれど買ってしまいたい・・

 

是非是非、多くの皆様に読んでいただきたいです。

本を愛するすべての人にお勧めです。

 

原題は「The Librarian of Burned Books」

まさに「焚書:葬られた本」を守ろうとした人たちのお話

 

物語は下記の描写を行ったり来たり

1943~44年;ニューヨーク 

 主人公はヴィヴィアン・チャイルズ 戦時図書審議会の広報部長

1932~33年;ベルリン 

 アルシア・ジェイムズ メイン州生まれの作家。

 ナチスによりベルリンに招かれて・・

1936年;パリ 

 ハンナ・ブレヒト 「焚書された本の図書館」図書館員

エピローグは1995年

後書きには史実と虚構、創作により変更されたところが書かれています

 

「本を焼く者は、やがて人も焼くようになる」

ユダヤ系ドイツ人ハインリヒ・ハイネの戯曲「アルマンゾル」の一節

本書でも引用されています

 

1933年、ナチス政権下のドイツで大規模な焚書が行われました

主人公の2人、米人作家アルシアとユダヤ人ハンナはそれを目撃

その夜を境に2人の運命は大きく変わっていきます

現実ではこの焚書を皮切りに「非ドイツ的」とされた1億冊以上の本が焚書や発禁により葬られたそうな

 

それから数年後、アメリカでは戦争に勝つために兵士たちに本を届けようという運動が起こりました

ところがこの兵隊文庫が政治の駒となり、検閲によりほとんどの本が撥ねらそうになったのです

それをどうにかしようと画策したのが本書のヴィヴィアンというお話

(史実とは異なりますが)

 

いやもう・・ナチスの話も戦時中の話もですが・・

何と言ったら良いのか・・心がヒリヒリとするような物語

 

ヴィヴィの夫エドワードの戦死からスタート。

彼女が気にしているのはエドワードの兄、ヘイル

世間知らずだったアルシアがベルリンで見たもの(というより見せられたもの)と感じたこと

ハンナの弟アダムはレジスタンスの活動家。幼馴染のオットー

女優で脚本家でもあるデヴロー・チャールズ(アメリカ人)は

アルシア同様、ナチスに招かれてベルリンに

 

個人ができることはあまりないかもしれない

でもその時々でみんなが選んだこと

そんな小さい積み重ねが結局は戦争に繋がっていってしまう

ということ。

 

「本への攻撃、理性への、知識への攻撃は、取るに足らぬ内輪もめなどではなく、

むしろそれは”炭鉱におけるカナリアの死”を意味するのです」

 

歴史小説であり、ロマンス小説でもあり・・

そして本当の裏切り者は誰か、という謎も最後の方まで明らかにならず

ハラハラ、ドキドキ。

本の力、物語の力を感じさせる素晴らしい1冊です。

 

是非是非、図書館、本屋さんで探して手に取ってみてください。