ケイト・モートン
栗原百代 訳
ランダムハウス講談社
2009年10月発行
前回はこちら
なんだか発行された順番と逆順で読んでるようです。
今回の作品が処女作!
でもそのせいなのでしょうか・・
読みたいけれど読み続けられない、みたいな・・
予想外に時間がかかってしまいました。
さて、題名の通り「リヴァトン」という名前のお屋敷
そこで起こった事件についてのお話なのですが・・
語り手は98歳のグレイス。
もう老人介護施設に入ってます。
そこに、その事件についての映画を作っている・・
という映画監督のアーシュラが訪れます。
実はアーシュラはこの館の主人だったハートフォード家の子孫の1人で・・
曾祖母から事件のことは代々伝説として伝えられていた、と。
その事件とは・・簡単にいうと(噂では)・・
イギリス詩壇の新星が、社交会の盛大なパーティの夜
暗い湖の辺りで拳銃自殺をする
それを見ていたのは2人の美しい姉妹だけ
1人は詩人の婚約者でもう1人は愛人だったと噂されている・・
そしてその姉妹はその後二度とお互いに会うことはなかった
はい、グレイスはそのお屋敷でメイドをしていて・・
今では事件を直接知っているただ1人の生き証人
グレイスは自分の記憶に蓋をして考えないようにして過ごしていたのですが・・アーシュラの訪問により記憶を呼び覚まされて。
自身がお屋敷に奉公に上がった日からのことをつらつらと回想していきます。もちろん途中に現実の話も混ざりながら・・
実のところ、グレイスは事件の後、奉公人をやめて・・
大学も行き、考古学者として業績を上げたようです。
生まれは貧しく、母子家庭で苦労して・・
時代背景はといえば・・20世紀初頭のイギリス
カントリーハウス。広大な土地と美しい庭園。
主人一家に献身的に仕えることに誇りを持つ執事やコックなど
下働きの人たち。
主人一家とはくっきり区別されてそれが当然である世界。
それが2回の戦争により・・少しずつ崩れていく
第一次大戦後、アメリカ資本の権化のような銀行一家が登場
イギリス貴族の凋落を浮き彫りにします
戦争によって失われた命
戻ってきても後遺症(精神的なもの)に苦しむ人たち
元には戻せない歴史の流れ
女性の生き方もどんどん変わっていきますね
グレイスは秘密を最後まで抱いて死のうと思っていたのですが・・
作家である孫に伝えてから、と考えを変えます。
過去の記憶を記録の一つとしてテープに吹き込んで残すのでした。