イチはエームの真剣な目を見つめた。
絵を描いている時にも思ってた。
エームはこの目をしている時が一番綺麗だ。
「とても綺麗だと思っていましたよ。
だからそれを描きたかった」
途端に、エームはぱっと顔を輝かせ、
皆が絵を取り囲んでいる方を見た。
「早く見たい。でも、姉さんを呼んで来るわ。
すぐ帰ってくるから、もし、雑貨屋のおじさんが来たら、
あたしが帰ってくるまで上手く引き止めておいてね」
そして急にくるりと後ろを向き、店の外へと走っていった。
イチはその後姿を見つめた。
緑色のスカートが広がり、ほっそりとした編み上げ靴が
嬉しそうに跳ねていく。
その姿はとても可愛かった。
誰かの事をそんなふうに思うのは、久しぶりだった。
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