生きづらさ
がいよいよ科学的な裏打ちをもって
議論されるところまできましたね。
職業的な興味として
本当に幸運な時代を生きていると
こころから思います。
コーチングを学び
産業カウンセリングを学び
やっぱり臨床心理士になりたい
と決心してここまできましたけれど
どれだけごまかしても
やっぱり「生きづらさ」を無視して
支援はできないな、と思っていました。
例えば、コーチングで
「目標達成にフォーカスする」とか
「ありたい姿にフォーカスする」とか。
過去ではなく未来を志向しようと
どれだけポジティブ思考をしようと
土台となる生きづらさが手つかずでは
なんともならない。
悩みました。
どうしたらいいんだろう。
どうにかしたい。
どこに答えがあるんだろう。
何ができるんだろう。
・
・
・
現場に携わりながら
本当に勉強するしかなかった。
2010年の開業以来、
5年も、10年も答えを探しながら
役に立ちきれないもどかしさ
歯がゆさ、悔しさ・・・
のどまで出かかる
「充分に役に立てなくてごめん」
の言葉を飲み込んで
勉強するしかなかった。
その思いが報われる気配が
この5、6年前くらいから
強く感じられるようになってきました。
そして、ここ4、5年ごろから
少しずつ具体的な手応えが
得られるようにもなってきました。
それに伴い
私の臨床も変わりました。劇的に。
いま心理士の間で注目されている理論が
公教育に反映されるのは・・・
いったいどのくらい後になるんだろう。
少なくとも私が院生時代の
カリキュラムにはなかった。
トラウマに関する何十年単位の
専門家間の論争を経て
ようやくICD-11に
そのアウトラインが載って以来(2018年)
複雑性PTSDや
発達性トラウマなどの概念が
急速にメジャーになり
関連情報もそれに伴い増えてきました。
ICD-11に採用されてなお専門家間でも未だに
見解が割れがちな概念ですが
(日本語版はまだリリース待ちだから一層)
トラウマに関して言えば
私は心理士の出番だなぁ、
と思っています。
トラウマ症状というのは
すごーくざっくり言ってしまえば
『記憶の苦痛と反応の見合わなさ』です。
もうちょっと補足すると
『体験の記憶が未だに苦痛を引き起こし
体験が終わった今現在でも
ごく日常に起こりうる出来事に対し
出来事の内容に見合わないほど
過剰な反応をしてしまう』
となるでしょうか。
だいぶ長くなったね
(ちょっとじゃないじゃん、笑)。
複雑性PTSDにしろ
発達性トラウマにしろ
反復的な、あるいは
常態的な苦痛の体験によって起こった
自律神経の調整不全による症状と
無縁ではいられません。
お薬で症状を抑えられるのは
薬効がある時間だけ。
体験によって ”クセづけされた” 反応を
恒常的に変えるのは
右利きを左利きにするように
実際に左手で書く練習をする、
というような ”別の体験” を
何度も重ねる必要があります。
左利きで書きたいなら
左手で書く練習が欠かせないのと同じです。
自律神経の過剰な反応を
妥当な反応に変えるのは
基本的に不随意であるものを
変えようというハナシですから
もともとが相容れないわけで、
だからこそ
それ相応にコツや準備がいります。
そのお手伝いをするのが
こと「生きづらさ」にかかわる心理士の
重要な役目だと私は考えています。
もちろん、お話を丁寧にうかがって
信頼関係を築いていくことは当然ですし、
感情的な苦痛を受け止めることが
支援につながることは
言わずもがなではあります。
ですが、お話を聞いているだけでは
「生きづらさ」はたぶんなんともならない。
生きづらさは
傾聴とか共感だけでなんとかなるほど
甘くない。
それが私の臨床的な実感です。
生きづらさへの支援は
トラウマにまつわる
自律神経の調整不全へのケア
(ボトムアップ)と
トラウマを特徴づける症状である
解離へのケア(トップダウン)
の両輪で進める、
これが私の基本姿勢です。
生きづらさの背景を
どれだけ科学的に理解するか。
これからの心理士は
とてもやりがいのある立場でかかわれる
と大きな希望をもっています。
生きづらさを
科学的な最新知見で理解する試みは、
いや、理解するだけでなく
臨床で具体的な支援を提供することは
もう始まっています。
本当に本当に
エキサイティングな時代になってきました。
薬にできることと
心理士にできることの役割分担が
より科学的に使い分けられる、
そういう時代になってきた。
生きづらさは
『体験の記憶と反応の見合わなさ』
と考えるなら
生きづらさは心理士が最も力を発揮できる
フィールドのはず。
いま多くの人が抱えている
得体のしれない生きづらさを
考え方やあり方、ポジティブシンキングで
なんとかしようとしていた論調が
いつか「あれは精神論だったね」
と言われる日が来るとよいな、
と思っています。
臨床は劇的に変わったのに
まったく変わらないホームページ↓ごめん
あ、でも、料金も変えてないよ!しばらく据え置き
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カミヤカオリ