トラウマと一口にいっても
一回の大きな
出来事によるものもあれば
ひとつひとつは小さくても
無数の出来事によるものもある
なんて話をしました
大きい小さいというのは
なんとなくイメージでは分かるものの
感じ方は人それぞれですし
影響もそれぞれで
「自分はどうなんだろう？」
と考えたときに
ちょっと分かりづらいかもしれません。
なので、今日は
大きい・小さいうんぬんは
ちょっと横において
トラウマに関する研究のお話を
少しご紹介してみようかなぁ、
と思います。
といっても、トラウマに関する研究は
本当にたくさんあって
どこから手をつければよいのか
ガイドがなければ
途方に暮れてしまうほどあります。
その中から、
私がお目にかかる方々に
おそらく一番関係がありそうなだな
と思う研究をふたつ挙げてみました。
お付き合いください
ひとつは『ACE研究』
（Adverse Childhood Experience）
です。
子ども時代の逆境体験が
その後の健康状態に与える影響を
体験の種類別にスコアリングし、
健康状態と相関を調べるという
アメリカで行われた大規模研究です。
日本語では
逆境的小児期体験
と呼ぶのが一般的のようです。
ここでは
精神的健康への影響だけでなく
身体疾患についても
調査されています。
とてもとてもとても
興味深い研究です。
読みやすい書籍も出ています。
※虐待等に関する話題がありますので
つらくなる時はどうぞ無理しないように
もうひとつ、
『ポリヴェーガル理論』
（Polyvagal Theory）です。
自律神経の働きに関するこの理論、
そもそもこの研究は
トラウマ研究ではなかったのですが
トラウマからの回復に活かせる、と
気づいたトラウマの臨床家によって
活用されるようになってきました。
一般に
”こころとからだ” と言うように
どうしても二元論的に
理解したくなってしまうのが
私たちの素朴な体験だし
実感だと思うのですが、
その二つを
無理なくつないでくれるのが
この理論の新しさだと思っています。
新しさ、というより
美しさ、かもしれない。
気分や感情に
身体的な背景を与えてくれた。
気分や感情に
生理学的な背景を与えてくれた。
気分や感情に
脳だけではない背景を与えてくれた。
そういう理論だと思います。
一つ目のACE研究が
示唆していることもそうですが、
トラウマと身体というのは
切っても切れない間柄です。
トラウマからの回復は
身体反応を抜きにしては
あり得ないと思っています。
どうしても
カウンセリングというと
”語り” が重視されがちですし
クライアントさん自身も
”話す場所” だと理解されている
ケースがほとんどです。
もちろん、語りは重要ですが
語り ”だけ” では限界がある。
トラウマからの回復には
語りだけではなく
語りと身体の
両方に取り組む必要がある。
これが私の理解です。
私のクライアントさんの中には
「カウンセリングなのに、この人は
どうして身体のことを言うのだろう？」
と戸惑う方もいらしたと思います。
その理由を
取り組む前に
説明する場合もありますし
まずはやってみて
後からお話することもありますし
状況によっていろいろですが
いずれにしろ
トラウマが関わりそうな場合は
何らかの形で身体感覚に
意識を向けてもらっています。
身体に意識を向け
何を受け取っているか
どういう反応をしているか
が分かるようになると
自分の感情もコントロールしやすくなる。
その辺りの理論背景を
説明しながら
具体的にどう活用していくか
お一人お一人の状況に合わせて
一緒に取り組んでいます。
身体に何が起こっているか、
を丁寧に理解することは
頭の中であれこれ考えること以上に
時にパワフルに作用します。
トラウマからの回復を求める人が
知っておいて損はないよ～
と思います。
トラウマにまつわる
心と身体をつなぐ研究のお話。
何かしらのヒントになるとよいな。
トラウマからの回復に
焦りは禁物。
必要な時間をつかって
回復していきましょうね。
シリーズその１
シリーズその２
シリーズその３
カミヤカオリ