2022年8月【読書記録】9冊(中編) | ひとしずくの純金

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たったひとつのわたしの生き方を見つける旅

 

さてさて、

前置きせずに続きに参りましょう!

 

8月の読書記録、中編です。

 

 

 

 

『世界がもし100人の村だったら』

ずいぶん前に話題になりましたよね。
今回初めて読みました。

本当にまったく知らなくて
子ども向けの童話風の物語だと
想像していました。

既読の方からみると
見当はずれな想像でしたね(笑)。



作者不詳、
もともとはメールで広まったのだとか。

ふぅん・・・おもしろいな。



ページをめくるたびに
淡々と重ねられる数字。

説得も説教も解説もないページたち。

ただひたすらに
数字で世界を見せていく。

へぇ。とか
ふぅん。とか。
そうなんだ。とか。

最初は知らない事実に
驚いたり意外な思いがしたり、で

ある種、おもしろく
見ていられるんだけど

だんだんなんともいえない
重苦しさがのしかかってくる。

ぼんやり想像していた数字を
くっきりした数字にして

目の前に突きつけられるような。



富の分配はこれでいいのか。
教育の格差はこのままでいいのか。
医療の不平等をどうするのか。

今の日本は
経済的には苦しい時期というのが
概ねのコンセンサスだと思うけれど、

それでもまだ
世界的に見ればとても豊かだ。

日々の暮らしはたいへんだし
日本国内にも貧困の問題はあるし

苦しんでいる人が
いないわけではないけれど

それでもまだたぶん、
私たちは豊かな側にいる。

世界的に見れば。

 



こんなこと、いいわけない。

いいわけないけれど
今ある豊かさも手放したくない。

自分の醜さとかずるさとか怠慢さとか
そういうもろもろが浮き上がってしまう。

だからこの本を見ていると
どこか居心地悪く苦しくなってしまう。



だけど、世界のどこかで
苦痛にあえぐ人たちは今日もいて、

その苦しみは
この本を読んで感じる苦しみの
比じゃないだろう。

この不公正を

見て見ぬふりをしている私たち。


世界に浮いたままになっている問題は
豊かな側にいる私たちの問題だ。

うぅぅ。。。



本当にシンプルな作りのこの本。

さらっと眺めるなら
数十分で読み終わってしまう。

それなのに
二周目は見られなかったな。。。

読んだ人も多いよね。
みんなはどうだったんだろう。
 

 

 

 

『夜想曲集』
カズオ・イシグロ著
土屋 政雄 訳

短編集。
短編集だけど連作のような。
『人間喜劇』風のような。

翻訳者さんが帰ってきてくれて
嬉しかった。

この土屋さんという方の翻訳が
私は好きだ。

著者の作品がもつ
なんともいえない曖昧さというか

ちょっと不思議というか
時代とか場所とかが
一瞬分からなくなるような

そういう雰囲気を壊さず、

というか一層引き立てているような
この人の翻訳が好きだ。

初めて読んだカズオ・イシグロの
『日の名残り』の素晴らしさが

すっと入ってきたのは
この人のお陰なんじゃないかと思う。



それにしても
この著者は毎回毎回
雰囲気の違う作品をもってくる。

だけど、毎回共通して感じるのは
人をイラつかせるのが上手い、ってこと。

ホント、イラつくのよ、
この人の作品って(笑)。

もちろん、これはいい意味なんだけど
なんていうか・・・

人は人の話を聴いていない。
人は人の意図するところを受け取っていない。
人は永遠に自分の世界しか生きられない。

これをね
作品の中で再現するんだよなぁ。。。



それがまたなんていうか
肝心なところで発生するから

ホント、イラつくっていうか・・・

ある種の絶望とか
笑いさえ引き出すというか。

説明せずに
体験させる。

言葉にせずに
感じさせる。

こういう作品を生み出せるって
本当にすごいなぁ、と思う。
 

 

 

 

『わたしを離さないで』
カズオ・イシグロ 著
土屋 政雄 訳

これはね、
あとがきとか解説とか読まずに

ぜひ、1ページずつ
自分の歩みで読み進んでほしい。

絶対おすすめ。
今年の1冊。

たぶん、一生忘れないんじゃないか
っていうくらいの衝撃というか。

背表紙のあらすじ?イントロ?を読んで
なんとなくこういう話かな・・・

と想像するところまでは
そんなにみんなずれないと思う。

だけど、物語は
そのナナメ上どころか

私たちの闇を真っ直ぐ突く方向に
展開していきます。



決してスプラッタ系の残酷なシーンも
グロテスクなシーンも無いです。

だけど、
どこまでも残酷でどこまでもグロテスク。

誰もが求めてやまない愛や幸福が

同じ人間のもつずるさや愚かさに
支えられてはじめて実現するとしたら。

これほど残酷で
グロテスクなことがあるだろうか。



そして、それ以上に切ないのは
そういう中にあって

語り手は
諦めの先の希望を手に入れる。

彼女には分かっている、
彼女に与えられた役割が
どれだけ不条理か、ということが。

生まれついての
限界とか運命みたいなものをも

ただただ受け入れていく姿が
もうなんとも・・・。



それにしてもこれ。

たぶん、未来の話のはずなのに

どう計算しても
1990年代くらいにしかならない。

未来の話なのに
過去のノスタルジーを感じる。

時空が歪んでいる。

 

これが100年、200年先の設定だったら

色調が全然違っていたはず。

 

ただのSFに

堕してしまったかもしれない。



でも、この絶妙な設定があったから
”他人事” じゃなく読めたんだと思う。

もうこの世界のどこかで起こっている
現実なんじゃないか・・・

私が知らないだけで
”実用” は始まっているんじゃないか・・・。

ぐらっとめまいがするような
錯覚に陥ります。。。

本当にうまいな。



というわけで
読書記録の中編はおしまいです。

気になる本はあったかしらん。

好きな本との出会いの
きっかけになればよいなーと思います。

次回、後編は
恒例の夏の課題図書です。


 

▼前編ニコニコ

 

 

 

▼後編ニコニコ

 

 

 

 

カミヤカオリ

 

 

 

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