先生方の働き方改革だけでいいか?


お子さんに学校の授業の様子をお聞きになられてみましたか?

学校によって、先生によって、大きな違いがあると思います。

せっかくお聞きになられたのでしたら、これからも時々、授業の様子もお子さんから聞いてみてあげてください。

お子さんの立場での気づきや意見があるかもしれませんよ。


さて、ここまでお話してきたように学校での学び方が大きく変化してきています。

学校が大きく変化しているのです。


ここで、もう一つの大きな変化が、「先生の働き方改革」です。


先生が労働者として、過酷な労働環境におかれていることは、事実です。

そのことについては、以前にもお話しました。

中学受験と不登校(286)、(287)、(289)も併せてご覧ください。

中学受験と不登校(287)

 



より子ども達の成長のために先生方の労働環境を整えて、よりよい学校運営を行っていきたいということは、十分に理解できます。


これは当然のことだと思います。


ところが、これは、学校だけでは片手落ちだと、私は考えているのです。

私達大人が、この学校や教育に関心を持ち、学校がどうなっているのか、そのことをもっと知る必要があると思うのです。

1960年代、1970年代に校内暴力がひどかった時代に、学校を管理するために、それまでブロック塀で囲われていた学校を、フェンスなどに変え、学校の中が見えるようにした時代がありました。


これは、学校の中を見えるようにして、子ども達にも先生方にも見られていることを意識させるものでした。

校内暴力を抑える効果があったかどうかはわかりません。


ただ、学校の中で起こっていることに、周囲の方に興味・関心を持っていただくことはできたのかもしれません。

今も学校はネットやフェンスで囲われて、学校の様子が外からでも見えるのですが、私達大人の興味・関心は子育てが終われば終わりです。


ある意味で当然なのですが、それでは、学校は、どれだけ文部科学省が旗を振っても、大きくは変わらないところがあるのです。


未だに、学校の先生は、生活指導、生徒指導に振り回されています。

それは、子ども達が大人しく授業を聞いて、学習に勤しんでいるばかりではないのです。

昔は、子ども達が薬をやっている、ラリっていると聞けば、シンナーかと思ったのものですが、今は、お酒、たばこだけでなく、麻薬まで高校生が使っているのです。

マスコミは、不安を煽ることはものすごく上手でも、都合の悪いことは一切、報道しませんから、高校生が麻薬で捕まっていることなど、ほとんどニュースにもなりません。

でも、日大のアメフト部の大麻の問題でも、これほど、簡単に大学生が大麻を所持できるのです。

同じように高校生、中学生が所持していても、もうおかしくない状況なのです。


そうでなくても、家庭の経済的格差は大きく広がり、夫婦二人ともが働くことが普通になっている今、子ども達とご家族の会話は、以前から比べても圧倒的に減っているのです。

今から15年前のデータになりますが、平成20年の「青少年白書」(内閣府)の「家庭及び地域をめぐる状況の変化」では、親子の接触時間が平成12年と18年では1時間近く減っているというのです。

 

内閣府 平成20年 青少年白書「家庭及び地域をめぐる状況」

 

https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/h20honpenhtml/html/toku_2_1.html

 

 

父親の子どもとの接触時間が、平日は「まったくない」とした父親が23.3%にもなっているのです。

ご家庭によって、この状況は異なることはわかりますが、この平成20年頃よりも、さらに母親の子どもとの接触時間が減っているのは、お母様方がお仕事をされていて、自分の育った時よりも、子どもと接する時間が少ないことは実感としてあると思うのです。


このような状況の中で、子ども達が健全に育っているとばかりは言えないのです。

このブログでも塾、フリースクールなどのお話をさせていただいていますが、現実的に、このブログをお読みになる、その時間的・経済的・精神的余裕もないご家庭が、この平成20年当時よりも増えています。

それは、地方自治体が行っている「貧困対策」の一環として、経済的困難家庭の子ども達に学習支援として、地方自治体が「塾」をやっているところが、本当にたくさんあるのです。

なぜなら、貧困により、塾などに通えず、受験で圧倒的に不利な状況があるというのがその根拠なのです。


この現実の中で、子ども達が、真面目に学校で授業だけを聞いていて、問題となることを起こさないかというと、そんなことはないのです。

ご家庭での躾の問題でもあるのですが、ご家庭で子どもと触れ合う時間は、明らかに減っているのです。

これで、ご家族の目が行き届かない学校の中で問題が起こることは十分にあり得ることであり、現実的に、公立中学校で、かなり「荒れている」と言われる学校があることは事実なのです。


このような状況の中で、学校の先生方にだけ働き方改革として、残業を減らす、休日出勤を減らす、と言ったところで、周囲の環境が何も変わらず、協力してもらえない状況では、改革のしようがないところが山のようにあるとお感じの先生方も、数多くいらっしゃると思います。


教育は、国全体の問題です。

学校の先生方の働き方をもっと楽に、もっと子ども達と向き合えるようにするには、学校にだけ改革をしようとしても、うまくいかないと思うのです。

このことは、私達大人がもっと意識をしておかないと、様々なところから、お子さんやお孫さんに降りかかってくることなのです。