黒木知宏という男 | 音楽業界の裏側で無謀に働く、凡人のブログ

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週刊 KONDAYという名の下、週に1度は更新したいと思います。






彼に会ったのは、去年の11月。
千葉ロッテマリーンズのファン感謝デーで
カレンダーを買ったらサインをしてくれるというイベント。

サインをしてくれるのは、3人いて
彼と、現主力打者の福浦和也、
そして今季4番打者に名前を連ねる事になったサブローがいた。

過去3年間、怪我によって投げられる事が出来なくなり
去年やっと復帰をしたが成績は散々…。
活躍度では他の2人が勝っていた。

しかし、彼の人気は絶大であり彼の列は長蛇を作った。
とてもファンを大切にする選手であり
笑顔でサインと握手をしてくれた。
その時の彼の手は大きく、そして死んでいない手だった。

プロに進み、ロッテのエース、そして球界を代表する一人の
投手まで上り、栄光を味わった。
投げる時に大声を出す気合は、ファンなら誰もが知っていた。
西武の松坂と投げ合えばニュースにもなった。

そんな重圧から責任を背負ったエースは
痛みがあっても逃げる事をしなかった。
その結果が、肩に爆弾を負うという代償を背負った。
3年間思うように投げる事が出来ないという
投手の生命線を奪われる、挫折を味わった。

今年に入って、2軍で調整を続け
先週ついに先発を言い渡された。登板は28日の日曜日。
俺は待っていた。ファンも待っていた。
即チケットを購入し、前日には完売になったそうだ。
今年5回目の完売。それがどれだけすごい事だろうか。
知る限りでは、開幕戦、GWぐらい。

火~木でソフトバンクと3連戦があったが
雨で2日も中止になってしまった。
その時の先発投手はスライドして次の日に投げるか
翌週に延ばされるかというなか、
首位ソフトバンクに敗れ5ゲーム差になったのだから
勝つ為の選択なのだが、
彼の投げる日は、決して変わらなかった。

迎えた当日、球場は開始前からボルテージは高まっていた。
GWに行ったけど、その時より多い沢山の人。
スタジアムを見たら、早くも満員だった。
スターティングメンバーが発表され、歓声が上がる。
最後に彼の名前が挙がると、言葉では表せない程の
大歓声になり、誰もが彼の名前を叫んだ。

そして彼がグラウンドに出てきた時に
誰もが「お帰り」と叫んだ。
俺はずっと待っていた。本当に長かった。
テレビや新聞であっても、彼の辛さを知っているから
彼が戻って来たのを見たら、涙が出た。

一礼してマウンドに上がる。
投球前、球場が一瞬静まり返る。
彼の第1球に誰もが注目している。

急速の遅いストレートが決まり、ストライクの判定。
力のない球が投げられたように見えた。
きっと最初はストライクが取りたかったんだろう。
その瞬間、大きな拍手が上がった。

連打を浴び、ピンチを迎えたが
なんとか無失点で切り抜けた。
その時を見る限りでは、「今日は負けるかな」と思った。
でも、それは緊張していただけにしか過ぎなかった。

試合はロッテが先制し、彼は尻上がりに調子を上げ
ピンチになっても、全盛期を彷彿させる
気合の投球、抑えた後にはあの雄叫びを上げる
最高のパフォーマンスを見せてくれた。

7回表、2アウトでピンチを迎えたところで降板。
観客からはため息が漏れた。
しかし、ベンチに戻ろうとすると、大拍手に変わった。
満員のスタンドから、惜しみない拍手と歓声が上がり
彼もそれに応えた。
後を継いだ2番手・藤田が抑えてさらに大歓声。

結局、6回2/3を7安打3奪三振3四死球、無失点。
これ以上にない最高の形で、彼は証明してくれた。
試合は4-0でロッテが勝ち、
この瞬間、ロッテのプレーオフ進出が決定した。

ヒーローインタビューにはもちろん彼が呼ばれた。
今日の主役をかぶり、満員の観客は彼の言葉を待っていた。
「長い間、本当にお待たせしました!」
その言葉に球場が揺れる。ファンが応えてくれる。
球場を半周し、ファンに一礼する姿もあった。
球団や関係者も、彼の復活のドキュメントを流し
満員の観客は帰らずに、オーロラヴィジョンに注目する。
球場内で花火を打ち上げるイベントありと、最高の形で
締めくくってくれた。

試合終了から約1時間後の22時に観客は家路に向かう。
そんな光景は初めて見た。
普通だったら、勝ちが決まったと思ったら帰る、
又は、終了したから混雑しない内に帰るのが常識。
しかし、みんな黒木知宏を待っていた。
みんな彼の言葉を聴きたかった。
今日は、最高に熱い一日だった。

もちろん今日のスポーツを全て録画し
翌日のスポーツ新聞を全て購入したのは言うまでもない。