マルセル/靴をはいた小さな貝 | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:Marcel the Shell with Shoes On
監督:ディーン・フライシャー・キャンプ
キャスト:ジェニー・スレイト/イザベラ・ロッセリーニ/ローサ・サラザール
配給:アスミック・エース
公開:2023年6月
時間:90分




今夜紹介するのは,新進の映像作家ディーン・フライシャー・キャンプが2010年から2014年にかけてYouTubeで公開し,累計5000万回再生を記録した実写にストップモーション・アニメを組み合わせた短編作品を長編映画化した『マルセル/靴をはいた小さな貝』。『ミッドサマー』(2020年)や『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』などの話題作を送り出してきた製作・配給会社A24によって北米配給され,小規模公開ながら評判と話題を集めた。アニメ界のアカデミー賞と言われる第50回アニー賞では長編インディペンデント作品賞,長編作品声優賞,長編作品脚本賞を受賞。第95回アカデミー賞でも長編アニメーション賞にノミネートされた。

マルセル(ジェニー・スレイト)は体長2.5cmのおしゃべりで好奇心あふれる巻貝。ある日,祖母のコニー(イザベラ・ロッセリーニ)と暮らしていた一軒家に,アマチュア映像作家のディーン(ディーン・フライシャー・キャンプ)が引っ越して来る。彼がマルセルの日常を撮影してYouTubeにアップするとたちまち話題に。

実はマルセルには家族がいて,前の住人が出て行く際に離れ離れになってしまっていた。人間の世界の予想外の大きさを知り,視聴者に情報提供を求めるが,野次馬が家にまで押し掛けたことで大切な祖母との日常が脅かされてしまう。周りが騒ぎ立てるほどに,孤独感に苛まれるマルセルだったが…。

マルセルのキャラクターや,祖母コニーとのハンドメイド感あふれる微笑ましい生活も魅力だが,そこに,SNS全盛の現代社会という背景が加わる。ストーリーが進むにつれ,見る者はマルセルを通して,人間さえも“地球”や“宇宙”という世界からするとちっぽけな存在だと再認識させられる。

新しい出会いや別れを通して人生を切り開いていくマルセル。私たちが忘れてしまいがちな喜びと悲しみに溢れたこの世界の美しさを改めて教えてくれる素敵な1本だ。


映画クタ評:★★★★


右矢印ジェニー・スレイト作品まとめ