映画:オッドタクシー イン・ザ・ウッズ | p・rhyth・m~映画を語る~

p・rhyth・m~映画を語る~

メインブログ【くた★むび】



監督:木下麦
キャスト:花江夏樹/飯田里穂/木村良平
配給:アスミック・エース
公開:2022年4月
時間:128分




昨年春にテレ東で放送され,“一見するとほのぼの動物アニメのようで中身は本格ミステリー”という作風で大きな話題を集めたTVアニメ『オッドタクシー』。従来のアニメファンだけでなく,多くの視聴者を巻き込んで熱狂を生んだ。セイウチの小戸川をはじめ,登場するキャラクターはみな動物。しかし,描かれるエピソードはYouTuberによる炎上,アイドルビジネスや芸人の舞台裏,警察官の汚職に強盗事件といった現代社会を反映したリアリティ路線。また,キャラたちの言動から小道具まで,劇中に張り巡らされたミステリー要素は,放送中から数々の考察がネット上に溢れ,クライムサスペンスとしても秀逸。

様々なコントラストが見事に溶け合ったそんな作品が,TV放送から1年を経て映画化された『オッドタクシー イン・ザ・ウッズ』を今夜は紹介。脚本はTVシリーズの脚本も手掛け『セトウツミ』の原作漫画家でもある此元和津也。原作と制作は映像制作会社のP.I.C.S。同社所属のクリエイター木下麦による初監督作品となる。

タイトルの『オッドタクシー(ODD TAXI)』とはTVアニメ版の10話で「オッドというのは2つひと組の片方」を意味する“作戦名”だと伏線回収される。主人公・小戸川の名前もoddの持つ「奇妙な」の意味も,きっとコッソリ掛けられているのだろう。劇場版の『イン・ザ・ウッズ』はポスターにもあるように「藪の中」の意味。こちらは,山中の薮の中で発見された男の死体を巡って7人7様の証言が繰り広げられる芥川龍之介の名著『藪の中(英題は「In the Woods」)』を彷彿とさせる

平凡な毎日を送るセイウチの個人タクシー運転手・小戸川宏(花江夏樹)41歳。身寄りはなく,他人とあまり関わらない,少し偏屈で無口な変わり者。趣味は寝る前に聞く落語と仕事中に聞くラジオ。一応,友人と呼べるのはかかりつけでもあるゴリラの医者・剛力(木村良平)と,高校から同級生のシロテテナガザルの柿花(山口勝平)ぐらい。そんな彼が運ぶのは,どこかクセのある客ばかり。

バズりたくてしょうがないコビトカバの大学生・樺沢(たかし),何かを隠すアルパカの看護師・白川(飯田里穂),ゲラダヒヒの街のゴロツキ・ドブ(浜田賢二),いまいち売れないイノシシとウマの芸人コンビ・ホモサピエンス,売出し中のアイドル・ミステリーキッス。そんな客との何でも無いはずの会話は,やがて失踪した1人の少女へと繋がっていく。事件後,関わった人々の証言により,本当はそこで何が起きていたのか? 様々な出来事の裏の裏を繋ぎ合わせることで浮かび上がってくる事件の新たな側面。小戸川が体験した“人生を一変させるような出来事”が,別の角度から見えてくるのだったが…。

お薦めは,先にTVアニメ全13話を見てから劇場版を楽しむこと。小戸川に関わった登場人物の証言とTVシリーズの再構成で,事件の新たな輪郭を見せながら,新たにTVアニメ版の最終回の後の展開も描かれる。

『鬼滅の刃』竈門炭治郎役の花江夏樹って,こんな声も出せるんだ!って,声優のスゴさも発見できる1本。未見の方はぜひ♪


映画クタ評:★★★★