サヨナライツカ | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:Goodbye, Someday
監督:イ・ジェハン
キャスト:中山美穂/西島秀俊/石田ゆり子
配給:アスミック・エース
公開:2010年1月
時間:134分




あなたは死ぬ前に
愛したことを思い出しますか?
それとも愛されたことを思い出しますか?

作品中の印象的なセリフだ。原作は芥川賞作家・辻仁成。個人的にはECHOESのボーカルとしての姿が印象深いが,南果歩,中山美穂の元夫として知る人も多いだろう。最近はニュースショーのコメンテーターとしても目にするようになった多才なモテ男。彼が2001年に刊行したのがこの『サヨナライツカ』。翌年に,行定勲監督,音楽・坂本龍一,衣装・ワダエミ,主演・中山美穂&大沢たかおでフジテレビ製作,東宝の配給で公開予定だったが,クランクイン直前に行定監督が降板。辻仁成が脚本を勝手に修正したり,仕事をサボって中山美穂と密会したのが原因と言われ,直後に辻仁成と中山美穂の結婚で製作中止となった。

しかし,原作を読んだ人は判るかもしれないが,この『サヨナライツカ』の沓子は,明らかに中山美穂のアテ書き。どうしても中山美穂の主演で映画化したかったのか,8年後にナゼか韓国映画として企画が復活。監督は『私の頭の中の消しゴム』(2005年・CJE)のイ・ジェハン。制作は韓国,キャストはオール日本人,舞台はタイという不思議な製作体系を取っている。

1975年,タイのバンコク。“イースタンエアラインズ社”の若きエリート東垣内豊(西島秀俊)がバンコク支社に赴任する。彼は東京に残してきた美しく貞淑な婚約者・尋末光子(石田ゆり子)との結婚を控えていた。野心家の豊だったが,端正な容姿と優しい性格で職場での信頼も厚く,日本人会の女性の人気を独占。仕事も恋愛もすべて順調,前途洋々の日々。

だが,豊の婚約を祝う祝宴に現れた真中沓子(中山美穂)が全てを変える。艶やかな美貌と官能的な魅力を漂わせ,じっと豊を見つめる沓子。数日後,沓子は突然豊のアパートを訪れる。光子のことを思いながらも,沓子の魅力に抗えない豊。言葉を交わす時間すら惜しむように2人は体を重ねる。そして,沓子の暮らす“オリエンタルホテル”で愛欲の日々が始まる。“サマーセット・モーム・スイート”で暮らす沓子の生活に,謎めいた魅力を感じながら溺れていく豊だったが…。

12年前の作品とは思えないほどに美しく存在感のある中山美穂。較べると当時30代後半なのに,ヘンテコな役作りをさせられてて見まごう西島秀俊。中山美穂にあんな口説き方されたら,豊じゃなくても溺れてしまう。

ただ,日本公開を視野に入れた作品なのに,どうも韓国人好みというか,男性目線の作品になっているのが残念。原作の沓子は,もっと誇り高くて魅力的な女性なのに,扇情的な部分ばかりが描かれるし,個々のキャラの印象が変わってて,まとまりのないままに終わる。

全編通してストーリーを巡らせると,いい話だし好きな構成なのに,肝心な『サヨナライツカ』の詩の意味を変えさせてしまう1本。日本での興行は大ヒットとなったから良し,なのかな。


映画クタ評:★★★★


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