監督:三池崇史
キャスト:窪田正孝/大森南朋/染谷将太
配給:東映
公開:2020年2月
時間:115分
数年前まで,年に2~3本を公開する多作さを見せていた三池崇史監督。最近急激に公開作が減って,体調を心配していたが,何と,女児向け特撮TVドラマ『ガールズ×戦士シリーズ』の総監督にクレジットを見かける。相変わらず驚かせてくれる監督だ。
今夜紹介するのは,そんな三池監督の近作。監督にとって“初のラブストーリー”と,予告で銘打たれていたので気になっていたのだが,コロナ渦で鑑賞できず,ソフトを待つこととなった。2019年の第72回カンヌ国際映画祭“監督週間”選出作品。商業公開はナゼか2019年9月に北米からスタートし,ロシア→フランス→イギリス等での公開を経て,半年後にようやく日本で公開されたという異色の公開ルートとなった,痛快エンタテインメント・アクション・ラブロマンスだ。
様々な事情を抱えた人が流れ込む欲望の街・新宿歌舞伎町。プロボクサーの葛城レオ(窪田正孝)は天涯孤独ながら希有な才能を持っているが,負けるはずのない格下相手との試合でKO負けを喫してしまう。試合後の診察の結果,病に冒され余命わずかと告げられるレオ。自暴自棄になり夜の街をさまよっていると,必死で逃げる少女モニカ(小西桜子)とすれ違い,追ってきた男をパンチ一発で倒してしまう。
父親の借金のカタに囚われ,薬漬けになりながらヤクザのヤス(三浦貴大)に売春をさせられていたモニカ。レオが殴り倒した男は大伴(大森南朋)という刑事で,ヤクザの策士・加瀬(染谷将太)と裏で手を組み,ヤクザの資金源となる“ブツ”を横取りしようと画策していた。その計画のためにモニカを利用しようとしていたのだ。どうせ先の短い命ならばと,半ばヤケクソで彼女と行動を共にするレオ。
一方,資金源の“ブツ”が消え,それを管理していたヤスが殺されているのを,ヤスの恋人のジュリ(ベッキー)から知らされた組員一同。刑期を終えて出所したばかりの権藤(内野聖陽)は,敵対するチャイニーズマフィアの仕業と睨むが,チャイニーズマフィアのフー(段鈞豪)もまた,この機に乗じてシノギを乗っ取ろうと,構成員のチアチー(藤岡麻美)に命じて兵力を集めにかかる。
ヤクザと悪徳刑事とチャイニーズマフィアの争いに巻き込まれていくレオとモニカ。欲望がぶつかり合う,人生で最も濃密な一夜が幕を開けるのだったが…。
『初恋』というタイトルに騙されるとケガをする。ロマンチックなイメージとは真逆のバイオレンスとアクションに呑み込まれながら,途中でタイトルなんて忘れてしまうのだ。端々に仕掛けられた“毒”に「これぞ三池監督!」と嬉しくなりながら,俳優たちの狂気の演技に舌つづみを打つ。中でも“脱皮”した感のベッキーは美味。
エンディングでようやく,タイトルを思い出しながら,ちょうど5本目の缶ビールが空になる…そんな秀作だ。
クタ評:★★★★☆
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