クライマーズ・ハイ | p・rhyth・m~映画を語る~

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英題:The Climber's High
監督:原田眞人
キャスト:堤真一/堺雅人/小澤征悦
配給:東映/ギャガ
公開:2008年7月
時間:145分




『半落ち』(2004年・東映)や『64-ロクヨン-』の原作でも知られる小説家・横山秀夫。小説家としてデビューするまでの12年間,群馬県の地方新聞・上毛新聞の記者だった。そんな記者時代に彼が遭遇した“日本航空123便墜落事故”を題材に,世界最大の航空機事故を最前線で扱うことになった地方新聞社が,異常な昂奮状態に置かれ,社内外で壮絶な軋轢と葛藤を繰り広げていく狂騒の1週間を極限の臨場感で描き出した傑作群像小説の映画化が,今夜紹介する『クライマーズ・ハイ』だ。

監督は『関ヶ原』『検察側の罪人』,今年は延期となっている『燃えよ剣』(東宝)の公開も待たれる原田眞人。タイトルの『クライマーズ・ハイ』とは,登山者の興奮状態が極限まで達し,恐怖感が麻痺してしまう状態のことを言う。

群馬県の地方紙“北関東新聞”の記者・悠木和雅(堤真一)は,管理職に就くことを拒み続け,あらゆる分野の記事を執筆する遊軍記者という立場を貫いている。社内の登山サークル“登ろう会”の仲間で販売局所属の親友・安西(髙嶋政宏)と共に,谷川岳の衝立岩登頂に挑もうと準備を進めていた1985年8月12日,乗員乗客524人を乗せた羽田発大阪行きの日航機123便が群馬と長野の県境に墜落した模様,との一報が入る。こうして悠木たちは,前代未聞の大事故を巡る熾烈な報道合戦に身を投じていくのだった。

県警キャップの佐山(堺雅人)は神沢(滝藤賢一)と共に現地へと向かう。全権デスクを命じられ,社内外での駆け引きや軋轢に苦しみながらも使命を全うしようと奔走し続ける悠木。熱くなった彼は,この状況が登山における“クライマーズ・ハイ”に近いと感じる。興奮状態が極限まで達した時こそが,最もミスを犯しやすいのだ。そして,それを悠木に諭してくれた安西が,ひとり谷川岳に向かう途中,クモ膜下出血で倒れたとの報せを受けるのだったが…。

カット数の多さで有名な原田眞人監督。それは,サスペンスフルだが内面の掘り下げにはもどかしさを感じさせ,時々インサートされる現代のパートは,見ていて過去とのリンクを難解にさえさせる。しかし,原作者の横山秀夫から「君は『クライマーズ・ハイ』がやりたいのか? 日航機墜落事故がやりたいのか?」と言われたのが効いたのか,未曾有の悲劇そのものを描くだけの映画では終わらず,事故を通過した主人公の,組織からの自立と,息子との関係の修復,そして,極度の興奮によって感覚が麻痺した状態を脱し,挫折を乗り越えて成長するという物語のテーマに戻り,映画的醍醐味が味わえる仕上がりになっている。

豪華共演陣の12年前の姿も楽しみどころの1つ。


映画クタ評:★★★★


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