二重生活 | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:岸善幸
キャスト:門脇麦/長谷川博己/菅田将暉
配給:スターサンズ
公開:2016年6月
時間:126分




今年のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』を見ていて,長谷川博己と門脇麦の共演する映画があったなと思い出し,見直した作品を今夜は紹介。

原作は直木賞作家・小池真理子が2012年に発表した小説。監督は,多くのドキュメンタリー番組を手がけ,近年はNHKのドラマで高い評価を受けている岸善幸。映画監督としてはデビュー作となる。

大学院で哲学を学ぶ白石珠(門脇麦)は,修士論文のテーマがなかなか決められず頭を悩ませていた。担当教授の篠原(リリー・フランキー)に相談すると,フランスの女性アーティスト,ソフィ・カルによる『文学的・哲学的尾行』を実践してみてはどうかと勧められる。それは,無作為に選んだ赤の他人を理由もなく尾行し,その生活や行動を詳細に観察することで人間の実存について考察していくという試みで,唯一のルールは対象者と接触してはならないというものであった。

たまたま本屋で近所に住む石坂(長谷川博己)を見かけ,突発的に彼の尾行を始める珠。立派な一軒家に妻子と暮らし,理想的な家庭人に思われた石坂だったが,次第に秘密の顔が明らかになっていく。同棲中の恋人・卓也(菅田将暉)にも打ち明けられないまま,尾行という禁断の行為にすっかりのめり込んでいく珠だったのだが…。

“なぜ人間は存在するのか? 何のために生きるのか?”というテーマを追究する方法としての“理由なき尾行”は,見る者にも,おそらく主人公の珠にも判らない。しかし,珠の目線で石坂の“二重生活”を垣間見るうちに,たまらなく“尾行”に囚われてしまう。

19歳の時に味わった喪失と絶望のまま,無意識のうちに穏やかな波風の立たない生活を望み,卓也ともどこか体温を伴わない関係を続けてきた珠は,こうして他者の人生を通して,自分にきちんと向き合わざるをえなくなる。

言葉にするのは簡単だが,役柄として難しいだろうと思える珠のキャラと感情の推移を,細やかな横顔と瞳と声のトーンで演じられる門脇麦の実力に感服。放送中の『麒麟がくる』のキャラとの対比も面白い。


映画クタ評:★★★★


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