美しい星 | p・rhyth・m~映画を語る~

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英題:A Beautiful Star
監督:吉田大八
キャスト:リリー・フランキー/亀梨和也/橋本愛
配給:ギャガ
公開:2017年5月
時間:127分




金閣寺放火を描いた小説『金閣寺』や,ギリシャの抒情詩を下敷きに若者たちの恋愛を描いた『潮騒』などの純文学作家として,また,東京・市ヶ谷の自衛隊駐屯地でクーデターを企て,割腹自殺をした“三島事件”の政治活動家として,昭和史に強烈な印象を残した作家・三島由紀夫。数ある彼の作品の中でも特に異彩を放つのが,1962年発表の宇宙人を題材にしたSF小説『美しい星』だ。

吉田大八監督は,大学時代にこの小説と出会い,ずっと映画化したいと考えていたという。そんな監督の30年越しの念願が叶い昨年公開されたこの作品を今夜は紹介。“地球環境の危機”と,当時の“UFOの流行”と,独特な表現技法として評価される“俯瞰的な視点”が,どのような映像に仕上げられたのか? と,とても興味があった。

テレビでお天気キャスターを務める大杉重一郎(リリー・フランキー)は,予報がまったく当たらないことで有名な気象予報士。心の空虚を持て余す主婦の妻・伊余子(中嶋朋子)と,フリーターで自転車便のメッセンジャーをしている息子・一雄(亀梨和也),美人すぎて周囲から浮いている女子大生の娘・暁子(橋本愛)の家族4人で平凡な日々を送っていた。

そんなある日,車を運転中に不思議な光に包まれたのをきっかけに,自分が火星人だと自覚する重一郎。時を同じくして,一雄は水星人,暁子は金星人として覚醒し,“美しい星・地球”を救う使命を託される。そんな中,ただ1人地球人のままの伊余子は,怪しげな水ビジネスにハマっていく。奮闘を重ね,世間を巻き込む騒動を引き起こし,傷ついていく一家。そして彼らの前に現れた黒木(佐々木蔵之介)は,地球に救う価値などあるのか? と問うのだったが…。

原作に最大のリスペクトを払いつつ,見事なまでに現代風にアレンジし,さらに滑稽さとシニカルさの中で“家族の再生”まで描いてみせたこの映像化は,“半世紀を越えた物語の復刻”という視点では高評価に値するし,個人的にも好きな1本。しかし,原作ともども「面白い作品か?」と問われたら,現代における評価は分かれると思う。三島由紀夫を知らない若者に,誤った作家像が植え付けられなければよいがと,フッと危惧したりもした。


映画クタ評:★★★☆☆


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『美しい星』
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