世界から猫が消えたなら | p・rhyth・m~映画を語る~

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監督:永井聡
キャスト:佐藤健/宮﨑あおい/濱田岳
配給:東宝
公開:2016年5月
時間:103分




川村元気という名前を見てピンときた人は映画通。企画・プロデューサーとして『宇宙兄弟』『青天の霹靂』『バクマン。』『君の名は。~your name.~』など,多くのヒット作を世に送り出しきた彼が,LINEで配信し書籍化された人気小説が,この作品の原作。映画化に際し,“せか猫”の世界観を表現してくれる監督として川村自ら永井監督にオファーし,キャスティングにも携わったという。

母(原田美枝子)を病気で亡くし,父(奥田瑛二)とは疎遠で,飼い猫のキャベツとふたり暮らしの30歳の郵便配達員(佐藤健)。ある日突然医者から,自分が脳腫瘍で余命幾ばくもないと告げられる。呆然となる彼の前に自分そっくりな悪魔が現われ,世界から何か1つを消せば,命が1日延びると伝える。

最初は電話,次に映画,時計と,悪魔に言われるがまま,大切にしてきたものが1日の命と引き換えに失われていく。そんな中で,彼は元恋人(宮﨑あおい)と再会を果たし,かつての想いや別れを思い出していく。親友・ツタヤ(濱田岳)や,過去の父の心に触れる。やがて,亡き母が残した手紙を手にした彼は,人生最後の日,ある決断をするのだった…。

HARUHIの歌う主題歌『ひずみ』と,猫を抱く佐藤健の柔らかな表情が,記憶から離れなくなる作品。函館やブエノスアイレスの風景も,共演者たちも,緩やかだが限られた時の中で,キッチリとした個性と存在感を画面に描いてゆく。それは,それぞれ異なる感情と感性とタイミングで,この作品を見る者一人一人の琴線に多様な音を奏でる。

その音がエンディングまで製作者の意図で揃えられたり整えられたりしない。そして,終盤に向けて誰の中でも大きな響きとなってゆく。100人が見れば100通りの感想と感情に包まれ,100通りの優しさと,100種の涙の味を知る。

世界から何かが消えても何も変わらないかもしれない
けれど…世界から消えていいものなんて何もない──

そう語りながら,見る者全ての心に寄り添ってくれる,お薦めの秀作。


映画クタ評:★★★★★


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