ハドソン川の奇跡 | p・rhyth・m~映画を語る~

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原題:Sully
監督:クリント・イーストウッド
キャスト:トム・ハンクス/アーロン・エッカート/ローラ・リニー
配給:ワーナー・ブラザース
公開:2016年9月
時間:96分




記事の編成の都合で今頃の紹介となったが,先月末に観た作品。予告編を観て「イーストウッド監督作品だと重いかな?」「ノンフィクションだと眠くなるかな?」って,迷いもあったが,トム・ハンクスだから観ておくか♪…と劇場に足を運ぶ。そして90分後,そんな危惧が無用だったと思い知ることになる。

2009年1月15日。乗員乗客155人を乗せた旅客機が,ニューヨークのラガーディア空港を離陸した直後に鳥が原因のエンジン故障に見舞われ,全エンジンの機能を失ってしまう。機体が急速に高度を下げる中,管制塔からは近くの空港に着陸するよう指示を受けるが,空港までもたないと判断したチェズレイ・“サリー”・サレンバーガー機長(トム・ハンクス)は,ハドソン川への不時着を決断。みごと機体を水面に着水させ,全員の命を守ることに成功する。この偉業は“ハドソン川の奇跡”と讃えられ,サリーは英雄として人々に迎えられた。ところがその後,決断は本当に正しかったのかと疑義が生じ,サリーは英雄から一転,事故調査委員会の厳しい追及に晒されることになるのだった…。

大筋だけだと『フライト』に似ている感じもするが,フィクションを幾層にも重ねて観客を飽きさせなかった『フライト』と較べると,こちらは7年前のノンフィクション。アメリカ人ならまだ誰もが記憶している事故と,あまり知られなかったその後の事実が見る者を食いつかせてゆく。

冒頭からトム・ハンクスと判らないほどに白髪・白髭メイクで現れるサリー。エンディングに登場する本物のサリーを意識したこのメイクは,観る者の興味をサリーに誘導しながら“日常の中の特別”と“特別の中の日常”を映してゆく。

離陸から着水までの5分と,その後25分ほどの救助シーンを撮影するために購入された本物のエアバスをはじめ,オペレーター,救助隊やボランティア,警察官,ニュースキャスターなど,救出に携わった当時の関係者を本人役で多数出演させ,事故を徹底的にリアルに再現しながら,時系列ではなく,機長のフラッシュバックによって事故の記憶を呼び覚ますという錯時的な構成も見事。常にサリーを襲う,判断を誤りマンハッタンに突っ込む凄惨な幻像を織り込むサービスや,公聴会でのシミュレーションでの爽快感など,86歳にしてエッジの効いた作品を世に送り出すイーストウッド監督に,改めて敬服する。

ちなみに,こちらもメイクで判りにくいが,副機長ジェフ・スカイルズの役は『ダークナイト』のハービー・デント検事/トゥーフェイスや『エンド・オブ・ホワイトハウス』のアッシャー大統領を演じたアーロン・エッカートだったりする。


映画クタ評:★★★★


右矢印トム・ハンクス作品まとめ