「将を射んとする者はまず馬を射よ」という言葉が、武家社会
にはありました。戦におけるセオリーでしたので、戦国時代な
どはこの言葉が特に重用されていたようです。
人間に限らず動物を支えるのは、下半身です。そして騎馬武者
にとっての下半身は、馬になるのです。従って、騎馬武者を倒
すには、まず馬を攻撃するのが鉄則だったのです。
そのため、馬も守り、守られなければいけません。というか武
者は馬を守ることに最大限の労力を費やさなければいけません。
「馬鎧」「馬面」は、馬の急所や弱点を防御するものです。馬
の全身に、麻布や革、鉄板などを綴じ込んだ防具をつけるので
した。
戦場だけでは、ありません。日頃から武者は、馬と息を合わせ
る訓練が、必要でした。そして日頃の訓練にも、道具は必要で
す。武者が座る「鞍」と「轡(くつわ)」、騎乗するために使
う「鐙(あぶみ)」などが必要。
さらには、泥除けとして馬の腹を守る「泥障」や、蹄鉄がまだ
なかったため「馬草履」も必要でした。
これだけの器具を揃えて使いこなす騎馬武者は、技術も財力も
相当に必要でしたが、身に着けて戦場を動き回らなければなら
ない馬自身も、かなり大変だったようです。