「鬼」というのは日本古来の生き物でして、恐い印象の方が
先立ちます。そして「悪役」となっている昔話や伝説が多い
ですね。
ただ「鬼」というのは日本の中で「象徴」のような存在で、人
間の近くで生きる、動物とはまた違う生き物として捉えられ
ていたようです。
そして、優しいか恐いか、善玉か悪玉かはいちがいに決ま
っておらず、様々だったようです。しかも、土地によって、言
い伝わり方が違っていたようです。ただ一貫して言えるのは、
人間よりはるかに腕っぷしが強いということくらいでしょうか。
優しい鬼の代表的な例は、津軽に出現する鬼でした。岩木
山のある岩木町鬼沢という所では、鬼がその体力を生かし
て農地開拓を手伝ってくれたという伝説があります。
そのことに喜んだ村人が鬼に感謝して建立したのが「鬼神
社」でして、今も鉄製の農具が奉納されているということです。
また岩木山の鬼は相撲好きだったそうで、村人の相撲の相
手をしてくれたり、子供に相撲を教えたりも、したそうです。
そんな伝説を裏付けるように、岩木山に限らず津軽地方の
多くの場所に、小鬼の像が建てられていて、魔除けとして崇
拝されているそうです。
鬼たちが教えてくれたからか、青森県の津軽地方はかつて
相撲が盛んで、大相撲にも多くの名力士を送り込んでいます。