古代、それも縄文時代にもすでに「医療」らしきものは、あり
ました。しかし科学的な理論が信用される習慣がなかったた
め、長らくは呪術や祈祷が治療の中心になっていたのが実
情なのでした。
そして奈良時代に特に呪術的治療の中心になっていたもの
として、「人形」があります。「にんぎょう」ではなく、「ひとがた」
と読みます。まあ今の「人形(にんぎょう)」の前身ではあるの
でしょうが。
これは、人の形をして顔などを墨で描いた木製のものや、土
器に人の顔を描いたものを、使用しました。
病気というのは「体に汚れが宿った」と考えるのが当時の常
識のようなものでしたので、病気になると体に宿ったその汚れ
を人形(ひとがた)に託して川などに流したり、土器の中に息を
吹き入れ、口に蓋をして汚れを流したりしたと言われています。
あまりにも迷信的でナンセンスに思えますが、ただこうしたや
り方が長年続いているわけですから、治った例も多々あるの
かと考えられます。
まあ「病は気から」などという言葉もありますが、効果を信じて
安心することでストレスがやわらぐというメリットは、あったのだ
と思います。安心感、ストレス緩和により、免疫力が上がった
のでしょう。万全な治療からは程遠いものの、効果がないわけ
でないことは、わかります。
そして、病気の多くは「体内に菌やウィルスが宿る」ことですか
ら、「体に汚れが宿るのが病気」と考えた古代の発想は、科学
的にも間違いとは言い切れませんね。