織田信長と豊臣秀吉に仕え、戦国時代の中で屈指のインテリ
として評判の蒲生氏郷という武将が、おりました。
その蒲生氏郷の部下に、西村という武士がいて、彼がある合
戦において抜け駆けをし、掟に背いたことがありました。氏郷
は怒り、一度は追放をします。
しかし間に入る者がいて、それを氏郷が聞き入れたため、西村
は戻ることになりました。
氏郷は、
「西村、浪人して力が弱っただろう。相撲を取ろう」
そう言いました。
西村は負けず嫌いなため、手を抜かず、氏郷を投げ飛ばしたそ
うです。周囲は、驚きました。
「もう一度取ろう」
氏郷が言ったため、再戦することになります。
西村の友人たちが、囁きました。
「今度はわざと負けろ」
しかし西村はそうせずに、再び氏郷を投げ飛ばしたということで
す。
すると蒲生氏郷は大笑いし、
「西村、見事だ。お前は信念を貫く、意志の強い男である。よし、
帰参を許す」
西村は、平伏したそうです。
今の世の中、接待ゴルフなどで、上司に対してとか、自分より立
場が上の人間にはわざと負けなくてはいけないなどという話を、
聞きます。どこまで本当か私にはわかりませんが、好きじゃない
です。蒲生氏郷のこのエピソードを、聞かせたいですね。