夕方あたりになると涼しい風が吹き始めるとはいえ、まだまだ暑いので、
ビールで乾杯といったケースは多々あると思います。なんて、ありがち
且つ強引な入り方ではありますが、要するに「乾杯」について言いたい
だけなのです。
中世ヨーロッパでは、酒に悪魔が宿っていて、そのまま飲むと悪魔は体
の中に入ってきてしまうと思われていたそうなのです。しかし、グラスを
合わせてカチンと音を立てると、悪魔は逃げて行くとも思われていて、乾
杯はその儀式でした。
またもうひとつ、ヨーロッパの騎士の決闘は、闘う前に酒の入ったグラス
を手にし、互いのグラスに少しずつその酒を注ぎあった後、グラスを合わ
せて、酒を飲みかわすという儀式を行なうのがルールでした。
これは、酒に毒が盛られていないことを証明するための儀式です。
今日本で行なわれている乾杯が、どういう意味を持つか。考えたこともな
くやり続けている人が多いでしょうが、強いて言えば、後者の意味合いの
方が近いのではないでしょうか。
決闘はともかくとして、他意はない。裏でよこしまなことは考えずに飲もう
という意味。いわば、騎士たちのいう「毒」を心の「企み」に置き換えたもの
として捉えれば、乾杯の意味に近づくと思います。
普段は意見が合わなかったり、仕事上のライバルだったりしても、酒を
飲む時くらい、すっかり忘れて気軽に飲みたいものですね。そういう意味
を含んだ「乾杯」の儀式でしょう。